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秋廣誠 「延長する視覚シェーマ」

「ヒトの作り出すものは、ヒトの脳の投射である。」この言葉は養老孟司氏の『唯脳論』からの引用です。今回「延長する視覚シェーマ」の秋廣誠さんの作品は視覚をテーマに制作されています。その美術と科学が結びついたような作品に興味を覚えお話をお聞きしました。

●今回の作品は光りを集めて一つの形にする作品ですよね。美術と科学の繋がりとして認識したのですが、説明して頂けますか?

 「僕自身は科学に興味があるんです。視覚の仕組みを科学者が脳の作用から調べたりとか、認知科学者が被験者の前に色々な材料を目の前にかざして脳の中でどう反応したのかを綿密に計測して調べますよね。だけどそれは脳の中の何かを結局視覚的な何かに置き換えているだけで、科学者の眼を通して見るんですよね。
それで視覚の仕組みが判るのだろうかと思うんです。精密に調べていけば判るのかと・・・、実はもっと単純なアプローチで判ってしまうような事なのではないかと思う事があるんです。日常では自分の視覚の仕組みを意識する事はないですよね。元々人間とはそういう風に出来ていて・・・今鼓膜で音を聞いているなと思う風にはなってはいなくて、もしそうなっているのであれば安定的な日常は送れませんよね。
もしかして生物の視覚のシステムは自分では見えないようにマスクされているのではないかと、そういうものを暴き出すシステムを作品にして見せてみたいなと思っています」

●美術を志した時にかなり科学的なアプローチを考えたのでしょうか。

 「以前から科学や工作に興味はありました。でも絵を制作する前の段階で『もの』を見たり感じたりする仕組みに興味が出てきて、例えば『もの』がこんなに現実にリアルに見れるのに何も解明されていない・・・それを考えると目の前がスコーンと抜けたような感じがして・・・。自分では『もの』は見えているんだけれど実体はあるのじゃなくて頭の中で再構成されて見ている感じがするんです」

●そうするとこの作品は脳の中にあるものを表に出したと思えばいいのですね。

「究極的には、実際に脳に『もの』が入って来ているのではなくて何もかもが中から外側に向けてプロジェクションされている。実際これはどの分野からアプローチすればいいのか判りませんが、そういうものを説明するのは芸術が一番近道かもしれないと思いました」

●そういう視点で見る方が少ない様な気がするので新鮮なイメージを受けました。本もかなり読まれたと思いますが、それを考える切っ掛けになった本はありますか。

 「量子力学です。それはミクロの世界を説明する転換になった力学が20世紀に出てきまして、その牽引役になったハイゼルベルグの『部分と全体』が切っ掛けになりました。その本は細かい事を抜きにすると議論がずっと続いていく本なんです。
ミクロの世界は日常からかなり離れた振る舞いをするので科学者の中でも解釈が変ってくるんですけども、そこでは最初の頃『描像(びょうぞう)』という言葉がキーワードになっていて、例えば『もの』と『もの』とがミクロの世界でくっついている時に輪とフックがあれば繋がりますよね。それで繋がっていると説明はできるのだけれど実際ミクロの中にフックがある訳ではない。だけど日常ではフックがあった方が認識しやすですよね。
そういうものを頭の中で想像する事が果たして有用なのかという議論になっていくんですが・・・要するに思い描く能力が人間にあるから逆に想像を妨げている部分があるんです。
もしかして視覚も自分たちがイメージする所から超えていていると考えると科学の力だけでは見えてこない所もあるような気がしています」

●人間は脳の共通性があるわけだから、イメージは共通項として判るけれど確かに不確かなものですよね。 科学も美術も脳が作り出したイメージが一つの形になっている訳だから・・・。

「人間は今これを見ているんだという事を自分に言い聞かせられる事は脳の余分についてしまった能力です。だから自分が客観的に見えているのならいいのですが、僕はそこで美術の批判する力を使って別の見方で視覚のシステムを肩肘はらずに考えたいと思っています」

●唯この作品は装置のイメージが凄く強いように感じますが、切り離す訳にはいかないのですか。

「そこが今キーになっています。今までは覗く事を前提に作っていたんです。何か変化する様を見せる事にずっと主眼を置いていたのですが、これからはそれをスッポリ包むような状態を見せる事が必要かなと思っています。
別の視点から想像する力が僕の頭にあって例えば鳥瞰図や透視図、間取り図などを見て空間が把握できる能力を引き出して作品にしてみようと思っています」

●美術でなければ出来ない訳ですか?  科学者はそう発想しないですよね。

「そうでしょうね」

・・・接点はあると思うけれどでも美術となるとそこに造形的なものがでてこざるをえないだろうと思うのでそれをイメージの世界にどういう形に置き換えていくのか難しいですね。まさにチャレンジャーですね。

「見識や見聞を広めて、自分の興味が無い分野からも切っ掛けや刺激を求めていかなければと思っています。同じ所に閉じこもっていたのでは駄目だと・・・。机の上で考えていただけでは上手くいかないんです」

●なるほど。今は壁画科の助手を・・・出身は東京芸大の大学院の壁画科ですよね。だいぶ浪人されたと聞きましたが。

 「僕は五浪しました。一浪したら実家の家業を継ぐ約束をしていまして・・・落ちまして家業を継ぎました。そして又再挑戦したんです」

●任期は後何年ですか? 学校を出てからは?

「どうしましょう。まだ何も考えてないんです」

出てからが大変ですね。今回は初個展。次はどういう展開になるのか楽しみにしています。

どうもありがとうございました。

プランクが「量子」を発見、20世紀の幕開けです。その後、ハイゼルベルグが『不確定性原理』を・・・オサルスは知っているといっても言葉だけ、まさに言語明晰意味不明、深く迷妄するのみ。でも世の中は不確かな事ばかりだというのは認識しています。
神もサイコロを振るんですよね。
21世紀。オサルスの未来のサイはどっちに振れるか? 脳の中で想像するよりも唯歩き続けるしかないな〜。

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