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大巻伸嗣 SHINJI OHMAKI

 1996年に東京藝大(取手)の創作展で大巻さんの・・・あれはどう説明すればいいのかな・・・。電車のつり革につかまっている黒い手が何本も連なっている作品。ん〜。説明がちゃんと出来ないけれど、その力強さが凄く印象に残っているんです。
次もあんな感じの作品なのかなと思っているとびっくりする位全く変わってしまう。見事に毎回違うのが小気味いいね。そこで今年『岡本太郎記念芸術大賞特別賞』を受賞されたのを契機にお話をお聞きしました。

●96年のあの黒い手はインパクトありましたね。あれを東京駅から銀座まで引っ張ってきたら面白いと思ったんですよ。

 「そうですね。例えば山手線の電車の中をつり革につかまる手のインスタレーションにして埋め尽くしてみたら・・・・・・美術館を移動させる訳ではないけれど実際に存在している空間に美術を展示できればもっと画期的で面白いと・・・そういう日常の空間に作品が突然現れるような展示ができたら面白いと思っています。」

・・・でもあの後、全く同じ作品は制作していませんよね。何故ですか?

「人間の内面と外面とか表面と背景に対する考え方を元にしているので、別に同じ物を作る事に意味が無くて・・・最初に素材があってそれをどうにかしようというのではなく、それにあう素材を絶えず探して、考え方を反転してみたり正面から見たり上から見たりとか・・・・・・色々な見方を変える事で、作品を『素材と空間ともの』を全部ひっくるめて出来ないかという考えが根底にあるんです。」

・・・視点を変える事が制作の基本になっているんですね。紙に書きだしたりするんですか?

「書き出しますね。独り言ではないですが、例えば銀座の町並みを見ている時に只町を見ているという感覚ではなくて、その空間から車や看板などが抜けた状態だったらどんな感じに風景が見えるだろうかとか、又細部を抽出するとどうなるかとか、そういう見方を気が付けばしています。」

・・・子供の頃から?

「そうです。子供の頃歯医者さんに行って天井に幾何形体の線とかがあるとそこから妄想しってたりとか・・・変な妄想癖はありますね。」

・・・ん!妄想癖があるの・・・。

「そういうところはあります。結局独り言を言っている事が多くて・・・それを切っ掛けにして制作ノートを作っていくんです。」

・・・子供の頃はどういう子供だったんですか。

 「ものを作るのが好きでした。僕の家は服のデザインから製造販売まで全部やっているんです。家が凄く忙しかったから一人でダンボ−ルとか生地を使って遊んでいたので作る事が自然に身に付いていったというか・・・。」

・・・ん〜。でも何故彫刻科に入学したんですか?

「高校の時、河合塾に行っていまして奈良美智さんとかに日曜日だけ絵を教えてもらっていて・・・。」

・・・ラッキーじゃないですか。

「当時はそんな人だと思っていなかったんで、いつも絵なんか描かないでスポーツの話をしたりしていたんですよ。で、ある時『おまえ、立体に行け。』と、言われて行ったらそこにはまってしまって・・・。でも、僕は最初は今までの彫刻家みたいなイメージがあまり好きじゃなかったのと・・・。立体といっても自分の家のように服を作るとか・・・幅広い形を作るという風に思っていたので大学に入ってからズレがありました。」

・・・そうですか。以前『生ずれば滅する。』というコメントを読んだ覚えがあるんですが、発想の根底に流れているのは何でしょう。

「『生ずれば滅する。』という、生まれて消えて又再生していくという考え方は・・・空手をしていた時に培われた言葉です。」

・・・空手の空とは空っぽの事ではないですよね。先日津田亜紀子さんとお話をした時にも感じたんですが・・・『空』というのは大乗仏教の根本思想の『空』・・・老荘思想の『無』と共通した所があって『有は無から生じる。』というものが流れているんではないかと・・・芸大の彫刻科はお坊さんがいるとか(笑)・・・チョット言い方がオーバーかな。

「芸大は古美術研修があって、そういうものを感じるんじゃないですかね。自分の中にもそれを見つけるような・・・。」

・・・なるほどね。少し話を変えますが、インスタレーションというのは見る側にとって作品に言葉が付随していかないと判り辛いというか・・・説明がいるというか・・・その部分はどう思います。

「先日静岡県立美術館で『きらめく光』というワークショップをやりまして・・・。」

・・・ (参加したみなさんの描いた風景画が、 現代作家・大巻伸嗣さんの作品の中にはめ込まれます。)というのですね。

 「あそこの美術館は地元の方が凄く使う美術館で、そこからまだ一般には判り辛い現代美術を徐々に勉強していこうと・・・年齢を問わずに何とか繋げていく仕事としてOpend Eyesと皆さんの内面を探り出そうとああいう試みをしました。

現代は年齢とか親子とか他人とかが途切れている時代と言われていますが、それをどうにかして繋いでいく為の仕事・・・そのステップとして皆にその場所で自分達が感じ取ったものを蓄積する風景画を描いてきてもらって・・・結構皆さん上手く描きたいという思いがあって・・・その上手く描くという事は、写実的な描写を描く事であって、本当の絵の本質は、そこで感じとった風とか匂いとか思い出とか自分の思いを線と点と面とかで表すもの。絵にならなくていいから対話をしながら描いてもらいました。

それを僕の作った額で抜き取ったんです。皆、自分の描いたものが抜き取られたので、何でそうするんだと訳が判らなかったようですが、抜き取った時に『もの』になったんです。一つの風景画が塊というか『もの』になったんですよ。
それで皆が判った訳ではないんですが、ハッとしたというか・・・どういう思いでもいいんですが、ハッとして『あ! 何か在るかも・・・。』というような感覚になってもらう事が凄く重要で、理屈はその次でいいんです。
作品を見て判んないよと感じて、説明を読んだ時に『あ! そうなんだ。じゃもう一回違う視点で見てみよう。』と思ってくれれば・・・自分が最初何だこんなもんと思ったことと説明を読んで思ったズレ・・・そこに僕は価値があると思います。
さっき言ったような『これはこれですね、というような伝え方』をしてしまう事が僕としては面白くないんです。何か新しい美に変換する事、そこでズレを起こしてもらいたい。
いいものとはいいズレがあるんです。そのズレの中で『もの』を考える・・・見つけ出す遊びとして色々な世界に広まっていけばいいと・・・社会に欠けているのはそのズレを探求する姿勢、それをどうにかして美術で出来ないかと・・・繋げて広げる作業として考えていきたいんです。」

・・・ハッとしないものはそこから何も生まれないよね。

「そうなんです。」

・・・でも、ハッとし続けなければならない大巻さんは大変ですよね。

 「悩みますよ(笑)。でもね、それがハッと出来る瞬間はあるんです。だから馬鹿みたいにずっと妄想に耽ったり、馬鹿みたいに涙したり笑ったり・・・色々な事を経験して又、何かやりたいなって・・・。
 ある意味で そのズレをこうでなければならないと思ってしまうのは、作家でもあるし、『もの作り』の寂しい所でもあるので、逆に遊んでいけるようなタフさ弾力性があればいいなと・・・。」

・・・今は弾力的でも段々硬くなってくるからね。でも、誰でも年をとるけれど年をとるのは毎年初めての経験だからいつもそう思っている事で何かが生まれる。そこで固定観念をもたずにやっていく事は大変だけれどチャレンジしないとね。今の日本の状況も同じだよね。これから朽ち果てていくのは悲惨だもんね。

「目に見えていますよね。どう朽ち果てていくのかが重要で、朽ち果てずに最後パッと綺麗に進化できれば、気持ち的には素敵な存在に変われるんではないかと。それこそ美術の根本にある永遠性に繋がるんじゃないかな。」

・・・不変ではなくて永遠性ね。

「変わらなければいけないから、変化していく・・・永遠性はそれを頼りに又何かに派生していくもので・・・人にも伝染していくものだと思っています。でも、何かを積み上げていく事は脆いものです。
崩れていく意識は皆持っているんですが、何かを構築していく意識は『諦め』が入ると脆いんですよ。まあ、それが現代なのかもしれません・・・今、僕は中高生を教えているから余計がんばって欲しいと思うんです。」

・・・ハッとしてズレなきゃ駄目なのね。

「ハッとしてグーならいいんですけど(笑)。ハッとしてズレは結構重要なキーワードなんですよ。」

●最後にもし作家にならなければどういう人生を送っていましたか?
 「ありえないです。もし途中で変わったとしても何かを作ってしまうでしょうね。作る事は止められません。そういう生き方をしてきているし小さい頃からの癖なので・・・これは変えられません。」

どうもありがとうございました。

所であの岡本太郎賞の特別賞を取った作品の床はどうやってとって置くんですか。

「あの床はプラスチックケースにギュと詰めて密封してあります。」

・・・お金掛かりますね。
「自分でやったからお金掛かってるんです(笑)。岡本太郎美術館のあの作品は東京ワンダーサイトの床の半分ですから、まだ半分箱に入って残っているんで僕の部屋メチャクチャ狭いんです。箱が一杯で・・・。」

・・・そりゃ大変だ。

「でも、あれが又違う所で知らされていけばいいかなと思っています。」

・・・床が壁になるのは面白い。でも資金力がないと大変だ。

「時間の問題ですかね。でもやりつづけます。」

・・・がんばってね。

これからは海外を視野に入れて展開したいという大巻さん。「日本の美術館も画廊も制約があるから、壁を汚しちゃいけないとかありますし・・・。」と、
彼が海外で活躍する姿、期待してます。

大巻さんの「何かを壊す事は何かを作る事になる。」というキーワード重要だと思いますよ。でもな〜。戦争は別ものですよね。殺戮からは憎しみしか生まれてこないもの、それこそアメリカとイラクの間のズレは致し方なしなのか? ブッシュの頭のズレが怖いよな。ズレはオサルスのようないいズレでないとね。

大巻伸嗣 関連情報 2003.2 2002.3 2001.7

岡本太郎美術館 http://www.taromuseum.jp/

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