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北野裕之 HIROYUKI KITANO

北野裕之さんの作品を拝見するのは今回で二回目なんです。
でも二年前の個展の時も写真を撮らせて頂いているのに、今回の作品の方がなぜかダイレクトに響いて来て・・・。人の記憶は不思議です。まあ、二年前の北野さんの作品が今回の新作とまったく同じ訳では無いので今回の作品の方がいいですね〜.で、済ませてしまえない訳ではないのですが・・・それでは作り手に対してあまりに失礼な発言をしているような気がして。
それが何故なのか、自分で検証しながら考えると・・・そういえば先日読んだ本に、記憶の正確さを実験した方がいて
『記憶とは客観的な事実を覚えるための記憶ではないんだ。』
ということが書かれていたのを思い出し、記憶がいかに曖昧であるか、それは見る側の心模様が以前と違たりとか外部的な要因とか不確かな事が大いに関係しているのでしょう。唯、彼は絵筆の変わりにカメラを使う作家。写真は記憶をとどめる道具。それでイメージはどのように広がるのか気になりますね。

Image as Sense

・・・・・・京都精華大学大学院のご卒業で94年から個展をされているんですね。

 「そうです。」

・・・作家になろうと思った動機は何ですか。

「作家になろうというよりは、最初の切っ掛けは写真を追求していきたいなというのがあったので、それで写真を勉強できる所を探していくと自動的に美大に行こうと・・・それでどんどん作品を作っていくうちに発表していきたくなって。」

・・・学部は版画科ですよね。

「うちの大学は、本格的に写真のみで独立している学部がないんです。デザイン科ならば写真を含めたビジュアルコミニケーションがあるんですけれども、あまりデザインをメインにしたものよりも造形的なところで作業をしたいと・・・それで色々調べていくうちに版画科の方で写真をやっているという情報があったので。」

・・・写真は版の一種だという事なんでしょうか。

「まったくそういうコンセプトです。 」

・・・版画はエディションがあるでしょ。数を作る意味がどうも納得出来ないところもあるんです。

 「僕は数を作る意識はないですし、寧ろ逆で一点ものに拘っているつもりはないですがどうしても作っているうちにそうなってしまいます。普通の写真のストレートの白黒プリントにしてもまったく同じエディションではできないんですよね。
同じように現像しても覆い(凹)焼きとか手焼きでやっていくと一枚一枚違ってしまうし、僕はクォリティーを求めています。それを重要視しているんです。」

・・・はじめは普通の写真を撮られていたんですか。

「今でも普通のものです。対象物があらかじめ確定しているわけではなくて、例えば、僕は普段大抵カメラを持ち歩いているんですが、目にとまったものをドンドン撮影しているんです。取り合えず撮影してしまうんですよ。そのあとで抽出して選んでいく形なんです。」

・・・1000カットから3000カットをお撮りになると聞きましたが?

「バンバン撮っていきます。」

・・・デジカメじゃないんですよね。

「違います(笑)。でも白黒なんで自分で現像して仕上げられますから、コストは掛かりますが、ラボに出すよりはずいぶん安くあがります。」

・・・やはり自分で現像しないと駄目ですよね。

「特に白黒はそうですね。」

・・・北野さんの作品はイリュージョンを消しているという事ではないんですね。

「ではないんですが、大元になっているのは目にとまったものや感じたものを撮るわけですが、それと最終的に写真としてカメラが捉えた忠実な世界とのギャップですよね。見たものと決定的に違うというか。」

・・・見たものと決定的に違うとは・・・。

 「例えばカメラは忠実に感情なしですべてのものを完全に写し取ってしまいますよね。確かに写真の性質上撮影したものが、忠実に記憶、再現されているのですが、出来上がった写真のイメージを見るといつも違和感を感じるんです。
あまりにも見えたままで、現実すぎて、何かが多すぎるのか、足りないのか、何かが違うと感じるんですよ。でも自分が見たものは、その場の雰囲気、空気、色や形、影などを肉体を通して感じたものだから感覚のイメージとして表現する事が出来るわけです。ですから私はいつも写真を作品制作の基盤としながら表現するものは感覚のイメージなんです。」

・・・なるほど。私も写真をよく撮りますが、写真は難しいですよね。誰でもカメラを使えば写真が撮れてしまう。機械な訳だから・・・。そこに心が出せるかどうか。でも、出せる人はいる。まあ、絵筆を使って出す人もいるんだから当たり前かもしれないけれど。

「僕はちょっと前までは出来ないと思っていたんですが、写真のなかにも感情を写し込めると思うんです。
今まで僕は写真の上にあとで感情をペインティングしていく事ではじめて作品になっていくと思ってたんですが、自分のあらゆる経験や肉体を通じて感得したすべての感覚を研ぎ澄ませていけば、普通の写真のみでも充分できるという事も段々判ってきて色々な可能性がまだまだあるなと・・・それで今回カラー写真も出しているんですが可能性を追求していく意味でも色々と試しています。」

・・・1994年の神戸アートアニュアルのコメントを読んで、
『動物。植物、昆虫、魚・・・彼らの表皮、その模様や色に興味があります。(中略)彼らの内部は臓器ではなく、彼ら自身の経験であり、精神であると感じています。表皮は、目に見る事ができる内部(精神)の最外部として存在している事がわかります。(中略)私には実際には模様がありませんが、私自身の内部から外部へと写しだされるものが模様といえるかもしれません。』
その模様がご自身の作品という表現の仕方が面白いなって思いました。

「はじめは自分の内面から浮き出てくるものがあると思ってたんです。そこに自然形態とか動物を見ていると自己主張をするような形でパターンを出してきているところが面白く感じていたんですよ。
それが段々spotted Darkness (豹がらの作品) やPhotograph,Untitled (Cosmos) や今回のImage as Senseに繋がっていきました。技法もそうですが、微妙に違ってきているのはコンセプトよりも制作することに意識を集中する事ででてきた作品だからです。」

・・・なるほど。さっき話した動物の擬態の話で、例えば進化論的認識論は、経験を積むことによって体に模様が出てきてその模様にリアリティーがないと絶滅するという事があるらしいというのを読んだ事があるんですが、それって作家も同じ事ですよね。

「ハハハハ・・・。確かに。」

・・・二年前に作品を拝見した時には私の目には模様が写らなかったけれど、今は写っているわけだから、模様が際立ったという事かな。ちょっとツジツマを合わせた言い方だけれど・・・。

 「今回大きな作品を制作してみたくて、やはり映像の本質的な事を考えていくと、例えば画廊の空間に大きな写真を見せられるだけで圧倒感というかそれだけで納得してしまうと思うんですよね。何かこう大型の映像がもつ迫力と逆に大きいことによってリアリティーを感じる部分もあるのではないかとそこに着目したいなと思っています。」

・・・画廊の空間は限りがあると思うけれど、逆にその場を制する作品はリアリティーを感じて、人に何かを与えられるんじゃないのかと思うんです。

 「いつも考えているんですが、いい写真というのは丁度真ん中に位置するもの。真ん中とはどういうことかというと・・・一枚の写真がまったく自分だけの肢体の目で構成されたものでもないし、抽象的な意味合いを込めた内面的な事だけで構成されたものではない。
内面だけでもないし完全に外の世界だけでもない。その両方が混ざり合っているところが一番理想的なものだと思うんです。だからそれを目指しているのかなという気もするんです。
今回の場合は現実的な映像のものからちょっと映像を残しながら内部を興してますから、映像だけど・・・少し内面的なものも混ざりながら・・・丁度中間地点に上手くマッチしてるのかなと思います。。」

・・・。外部ばっかりでも駄目だし、内部ばかりでも駄目、そうじゃないと成立しないですもんね。今度はニューヨークに行かれると聞きましたが。

「ニューヨークに近いロードアイランドの美術大学に制作で一年間研究滞在します。アメリカを選んだ理由は・・・最初の切っ掛けはアメリカで個展をしたのでその影響があったのと友達も多いんです。」

・・・最後にこれからは?

 「クォリティーが一番重要になってくるんです。例えばファッションブランドのデザイナーが作る鞄であったり靴であったり、色々な人達が関わっているので出来上がりのクォリティーは凄く高いと思うんです。
今は取りあえず一人で全部やってますけど、かと言って工房で皆で作業をしたいわけではないんですけれども・・・カチとしたクォリティーには拘っていきたいと思うんです。」

ありがとうございました。気をつけていってらっしゃい。

一年間の研究滞在で何をするんですかと聞きましたら、
『時間も限られているので、できるだけ制作に集中していきたいです。』
という返事。サンフランシスコでの来年の展覧会が楽しみですね。どのように模様が際立ってくるのか検証しに行って見たいな〜。

北野裕之 関連情報 2003.9 2000.8

ギャラリー池田美術 http://kgs-tokyo.jp/ikeda.html

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