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重野克明 Katsuaki SHIGENO

『凄く繊細にした奈良美智だと思う。いいな〜。画面のこの汚れや線など確信犯ですね』 と、版画芸術の編集長の松山さん

『銅板画としての面白さと初々しさとが、ひとめ見て判りますよ』 と、77ギャラリーの遠藤さん

『以前から彼を見ていましたが、版画らしい版画かな。紙にも技法にも刷にも拘っているし、ひと世代前の人達のいいところを受け継いでます』  と、某版画コレクター。

さあ、この期待の新星は誰でしょう。 答えは、重野克明さん。
オサルスが個展の会場(77ギャラリー)で色々な方にお聞きすると、いらした方の九割は彼の作品を誉めていました。必然的に作品はかなりの売れ行きらしく、ちょうど滋賀県から作品を買いに来られた方は、『家族旅行の作品を見ると、涙がでます』 と、本人が聞いたら泣けるような事を・・・。
ん〜。すごい誉めかただ。版画好きにはこたえられないのかな〜。
どうもいまひとつ銅板画の魅力が判らないオサルスは、ネットで色々調べてみると。

銅板画のことをフランス語では 『オー・フォルト』 、『強い水』 というそうです。

日本では 『銅を使った表現』 なのですが、フランスでは 『腐食液による表現』 になるそうです。

なるほど。彼の銅版画は腐蝕液を使って間接的に銅版を彫る技法だから、「腐食液による表現」 というほうが判るな。微妙な線はこうやって生まれるのか。と、この言葉で納得。でも作家は何を思って作るのか? 聞いてみましょう。
おっと、その前に聞きたい事があったんだ。

 ・・・ 日本版画協会賞・B部門審査員賞の 『遠藤さん』 は、77ギャラリーのオーナーがモデルなの? 顔が似ているような・・・

 「そうですか。ぜんぜん関係ないです。偶然です」

 ・・・そうなんだ。2001年のギャラリー環の個展で川妻さんから 、
『歩きながらでも授業を受けながらでも、制作の事を考えてますね。今の大学生はデッサンをしないじゃないですか。この人はデッサンをしながらイメージ作りをしていくタイプ。ほら、このデッサン帳を見て下さいよ。』
と、言われて拝見したのを思い出しました。デッサンはかなりされるんですか?

「今年は、デッサンはしていないんです。少し慣れがでてきたので、極端にいえば見なくても描けるから、それがちょっと違うなって・・・」

・・・美術を志した切っ掛けは? 藝大を選んだ理由は?

 「絵が好きだったし、自分の情熱をぶつけられるようなものが欲しかったんです。藝大は一番いいところに入ってビックリさせてやろうかなと。トップがいいじゃないですか。どうせ目指すなら難関のほうがいいなと。でも四浪してます」

 ・・・へぇ〜。最初から版画を選んだの?

 「 予備校の時に版画実習をした事があって 、自分は銅板画にむいているなと思って」

 ・・・何故、銅板画に惹かれたの。

 「 絵を始めた時に、本の挿絵とか、誰々の作品というわけでは無くて銅板画を見ていいなと、多分レンブラントとかそういう作品だったと思います」

・・・版画を作るのと、直接描くのとでは、直接描いた方が、イメージは描き易いのではないですか。版を作る事でもどかしさがあるような気がするんですが、また版画を作るには技術が必要でしょ。

「技術はあとからついてくるものですから、僕は技術を勉強するのはあまり好きではなかったんです。単純にエッチングの腐食のやり方と、刷り方と、そのくらいしか教わってないんです。基本的な事だけ判っていれば・・・技術があるよりも僕の場合はニードルが一本あれば何でもできると思います。シンプルがいい。刷る時に紙を選んだりすることはありますが、それは技術というよりも好みだから」

・・・重野さんの版画は画面に、微妙なニュアンスがあるじゃないですか、それはかなり計算して作っているんですか。

「それは偶然です。勝手に出て来る事はあります。銅板画で雁皮刷りをすると味が出るし、板にキズがついていると、ちょっといい感じになったり、それでいい雰囲気に見えてしまうのが危険だって言われるんですが、利用しない手はないと、だっていいものはいいじゃないって感じです」

・・・以前作品について質問した時に、『45パーセントの出来です。あとの55パーセントは自分を厳しく見つめていくんです。』 と、言ってましたよね。今回は何パーセント?

 「難しい所ですね。展覧会をして人に見てもらって、例えば30パーセントと言ったら、見る方に失礼かなと、こうやって発表したのだから、100パーセントなんだと思います。でも60パーセントくらいかな、それが今の力だと思うから」

 ・・・エディションの31は何故?

「30にしてもよかったんですが、もう一枚多くてもいいかなと。逆さにすると13だからいい番号かなって」

 ・・・ん? 題名は、作品が出来上がってからつけるんですか? 逆ですか?

「両方です。その質問は僕もよく作家にするんですけど、それは一番質問しやすいですよね。あと版画の作家同士だと、この技法はどうやっているのとか聞く事が多いですが、その質問はつまらないですね」

・・・技術はオサルスには判りませんので、そんな事は聞きません。むしろイメージは何処から来るのと聞きたいかな。

「手の癖だったりするんじゃないですか。別に夢に出てきたかたちでもないし、手で描くんだから」

・・・銅版画を描いてるんですね。

「銅板を刻むような気持ちで描いてます。ただ、今回の作品は綺麗に仕上がったねと思う人もいるかもしれない」

・・・私はだいぶ変わったなと思いました。今までよりポピュラーになったような・・・。

「以前はグロテスクな感じがあって、結構イラクとかの写真をみると、僕の描いているような遺体が・・・そういうつもりでは無くて、何気に描いていたんですけど、何か描きづらくなったんです」

・・・ん〜。ちょっとロマンチックになったような気がしたかな。以前は孤高の画家を目指しているような気がしたんだけどね。

 「少し小難しくしていたところはあったかもしれません。孤高の画家は格好いいですね。今はみんなの画家ですか(笑)」

 ・・・(笑) また変わるかもしれないけれど、ご自身のなかでは一貫して作っているんでしょうからね。

 「そうでもないです。例えばまた一枚絵を描くと全然違うんで・・・机の前に座ると口で言っている事がすべて吹っ飛ぶから、ゆめまぼろしだと思って下さい」

 ・・・いいなぁ〜その云い方。一番最初に木口と銅板画を拝見して、私は木口の方が好きだったんですが、もうやらないの。

「少し限界があるなと感じているだけで、やらないわけではないです」

・・・限界?

「やはり、自分の中では自由がきかないんです。例えばクレヨン一本で描くには限界があるとか、それと同じです。でも、集中力がいる仕事だから、集中力を高める時にやってみようかなと、そうすれば銅板にも生きてくるかなと」

・・・最初から作家になろうと思ってました。

「ええ。僕のなかでは決めていました」

・・・そうすると今の展開は、いい道を歩んでると思いますか。

「遅いんじゃないかと。プロ野球選手だと20代後半で解雇されてしまう人が一番多いんですよ。松井なんてメジャーリーガーで何億円も稼いでいるじゃないですか、僕はやっと新人ですという感じですから(笑)」

・・・先日 『版画芸術』 の松山さんが、日本の版画のレベルは凄いと言っておられたから、海外に行かなくてもいいかもね。

 「技術を学びに行ってもしょうがないかもしれない。質より量が大切だとは思うんです。天才といわれている人は量が多いじゃないですか。量が少ない天才は少ないです。フェルメールくらいしか思い浮かばない」

 ・・・今回は全部新作なの。点数は? 期間はどのくらいで?

 「新作です。点数は22点。八ヶ月くらいで出来ました」

 ・・・かなり売れていると聞きましたが、エディションの31枚全部自分で刷るんですか?。以前、ある作家に質問した時に、刷士とのコラボレーションだと聞いた事があるんです。なるほどと思ったんですが・・・。

「それはありだと思いますけど、今回は全部自分で刷ります。自分で刷ったほうが次のインスピレーションが湧いてくるのではないかと思いますから。まあ、一枚一枚作家が刷るのがいいという人も多いですけど、バ〜ッと印刷物のような感じも面白いとは思います。それも魅力があるかなと・・・」

・・・売れるという事に関してはどうですか。

「作品が凄く売れると経済的には助かるし、次の作品を作るのに材料が買えるから、売れなきゃしょうがないけれど買ってくれと頼みまわるわけじゃないから、僕は売る為に描いているわけではないから」

・・・・最後にこれからの夢を一言お願いします。

 「夢は天才になる事ですね」

・・・なれたらいいね。ありがとうございました。

夢は天才になる事かぁ・・・。

「天才はなろうと思ってなるものじゃないって思うんです。ひとが決める事だから。将来は教科書に載るような作家になりたいです」

このコーナーは “dreamer”。 夢はどんなに大きくても、重くないし邪魔にならない。
いいなぁ〜。こう言えるのは凄い。
重野さんの、『手で描くんだから。』 という言葉に、ふと手を見ると、とても大きないい手をしていました。

実はなんと、重野さんは大の阪神ファン。今回の個展で、あの掛布さんから花を贈られるほどだもの。
夢を掴み取るタイプかなって思う。 “がんばって” って応援したくなっちゃいましたよ。

重野克明 関連情報 2004.3 2002.5 2002.1 2001.6

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