「僕のアトリエの側に、お世辞にもきれいと言えるようなお店ではないんだけれど、もの凄く美味しい洋食を食べさせる店があるんです」
と、大森さんからのメール。
「そこは再三新聞や雑誌にも取り上げられている店で、僕のお薦めです。行きませんか?」
のお誘いが・・・。
場所は千代田線 『町屋駅』 から歩いて15分、隅田川のすぐ側のラーメン屋さん?。看板には中華料理と洋食の文字・・・。普通、ここが美味しい料理を出す店とは思えないたたずまい。おまけに店主はお出かけ中・・・

「朝、仕込みをしてから何処かに行っちゃったのよね。気まぐれだから・・・」
ええええ・・・! 留守なんだ。どうしよう。 ランチ食べられないのかな?
「仕込みは出来てるから食べられる事は食べられますよ」
と、妹さん。ホッ! このお店はマスターと妹さんとで切り盛り、奥の座敷では巨大な猫がお昼ね中。
まあ! とにかくランチを食べながらマスターを待つ事に・・・。
こちらのマスターはホテルオークラに20年間勤務。本場仕込みで一流の腕の持ち主。しかし体をこわし、1990年にホテルを退職。家族の励ましで体をいたわりながらの日々。お会いして色々お話をお聞きしたかったけれど、残念。
●唐突ですが、大森さんGEISAI-2の感想をお願いします。
「出品しているから余計今回のGEISAIは楽しくてしょうがなかったんです。お客さんが僕と同じくらい楽しんでくれたかは別として・・・。疲れて帰った人もいましたよね」
「今までは同世代や10代、20代の人に見てもらう機会がそんなに無かったし、今まで僕の展覧会を見てくれた人には失礼に聞こえるかもしれませんが、画廊で聞く感想や評価に飽きてしまって・・・。まあ、評価されるにしても貶されるにしても木彫がどうの、漆がどうの、鑿(のみ)跡がどうの・・・と。僕のように具象で作りこむタイプは素材や技法、技術的な質問が多かったんです。今回は、かっこいいか、かっこよくないか。凄いか凄くないか・・・。ストレートな反応が殆どでした。
会場を見ると下手ウマな路線の人達が多かったですし、僕はそういう人達はきちっとものを作る技巧を否定してるのかと思っていました・・・、それよりももっとポップな感覚のものが今のアートだと考えているのかと・・・、勝手に思い込んだんです。
でも蓋を開けて見ると僕の作品はコテコテの具象という訳ではないですが、そういうものにきちっと反応してくれた事は単純に嬉しかったし意外でした。芳名帳の感想も僕が調子に乗ってしまうぐらい嬉しい事ばかりで・・・。ああいった
『もの作りに憧れます。』 と言ってくれてたんです。自信がついたというか・・・。これから周りの評価に左右されず安心して作品が作れるのではないかと思っています」
●そうですか。それはよかったですね。でも全体的に見るとオサルスは閉塞感を感じたんですけど・・・・。
「僕は逆です。途中で気づきましたが、会場にパソコンがあまり無かったですよね。事務的に使っていた人はいましたけど、デジタルアートやパソコンの画像を積極的に見せるようなものは無かったですよ。レベル云々はともかく手で作るものに戻ってきたのではないかと思います」
●ん〜。でも活気の事を考えれば前回の方が期待感はありました・・・。まあ! 前回は場所が小さかったけれど、でも今回はもっと来ると思っていました。予想に反してというか・・2万人の予想が6千人しか入らなかったんですものね。赤字じゃないのかな?
「
ん〜。そうかもしれませんね。究極を言えば今回はとても楽しかったけれど、じゃあ! 次回一般のブースで出すかと言われれば出す気はないです。それが本音です。プロブースは壁が三面あるし条件がいいじゃないですか」
●でも一般のブースで出せば賞がとれるのでは。そこから 『プロ』 を目指すやり方も無い訳ではないでしょう。
「ああいった賞には興味がないから・・・」
●興味がないか・・・。
「僕は薮内
(佐斗司) 工房に8年勤めましたが、大学4年生から薮内先生のやり方を見ていて 『プロ』 という事を色々考えました。単純に言えば自分の作品だけで食べていける人が普通の
『プロ』 ですよね。でも美術の場合は話が複雑で・・・。
GEISAI にだしている一般ブースの人達は 『プロ』 という考えがまずあるのかな・・・と、 『作るもの』 で全部生活を養う事を目指す以前に、自分の作りたいものを作る事を目指すのか、収入を得る副業を持って作りたいものを作るのか・・・二つある事を恥じとしてないというかそういう雰囲気は感じましたね」
●ん〜。では大森さんは何を目指すの?
「仕事として僕の展覧会をやってくれている画廊さんにこういう事をいうのはなんですが。僕のやっているのは、どちらかというと精神安定剤的な感じでやっていると・・・この頃特に感じます。彫刻を始めてから自分で言うのもなんですが、自分の精神状態・人間性がいい方向に向かっているように思うんです。
それは自分に一番合っているから言える事だし・・・何よりも自分に自信がつきました。自分に自信がつけば全てをよくしてくれる。作る事で食えても食えなくてもこれだけは止められないと思います。
もし彫刻を止めたら折角積み重ねた自信がその日で無くなちゃうわけです。何をするにもこれだけは押さえておかなければいけないんです。 ただ、それでいいのだけれどお金のかかる都会にすんでいる訳だから生きていくには結果お金になったり仕事になればいいなと思いますけど。
美術に関して 『プロ』 という答えは幾つかあるように思います。例えば僕も自分の表現作品と平行して 『刻字』 の仕事をしてますが、勿論自分のオリジナルだけで食いたい夢はあります。だからといって作りたいものを我慢してデパートサイズのものを作るつもりはありません。お金を稼ぐために仕方なく作品を作り上げるのが
『プロ』 なのか。買ってもらえる作品が分っていても 『今』 自分が作りたいものに拘 (こだわ) って作るのが 『プロ』 なのかずっと考えていますが判りません」
●自分が作りたくて作らなければいい作品は生まれないとは思いますが・・・。続けていく事はたいへんですね。
「そうですね。僕の場合は全部止めればチャラになってしまう。僕の目指すものは生活の中で白いご飯を食べるみたいな・・・作る事が当たり前の毎日になるのが目標です。今は彫刻を続けられる糧を得るのに必死ですが、自然にそれが回転するのが目標ですね」
どうもありがとうございました。
今、気がついたというか写真を撮っていて思った事は、顔が下を向いて話す人だなと・・・。
●大森さん前から下を向く人でしたか?
「仕事柄下を向いて作品作るのと、僕の作品はずっと下を向いているものが多いんです。たまにそれに気づく人がいて
『切な悲しい』 と言ってくれます。そう見てくれると嬉しいですね。僕は一人っ子だし劣等感の塊だから・・・、小・中・高とずっとそうでした」
●え! そんな風には見えないですね。
「小さい頃はクラスで一番小さくて体力が無かったんです。男の自信は・・・“美術と体育とどっちが出来る”
と比べれば体育ですよ。憧れました。今は昔の劣等感が少しづつ減ってきているようには思います・・・」
「下を向く奴なのにこのごろ年々目立ちたがりになってきてますよ。だからアートフェアーは外せない。輝ける場所ですから」
●でも、アートフェアーは段々つまらなくなってきてますよね。
「出品する方にしてみれば、面白くないほうが目立てるじゃん・・・と。普通に当たり前のものを作れば絶対にウケると思います。ハハハハ・・・・」
- - - まあ、そうかもね!
あ! 最後にデザートを忘れてました。キウィのシャーベットとアイスクリームがとっても美味しい。流石に
『ミシュラン』 が三ツ星に認定したベルギーの超高級レストラン 『ヴィラ・ロレーヌ』 で腕を振るったシェフの料理、堪能しました。
ご馳走様。
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