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 最近は本を読む人が減っていると言われていますが、画廊のオーナーには昔文学青年だったという方が多いんですよ。今日はその中のおひとりギャラリー池田美術の池田さんに本についてのお話をお聞きしました。

● 今回ご紹介して頂く本はどのような?

 「うちの画廊は紙の作品、版画、ドローイングを主体に展開していますが、僕がいつも展覧会の材料を考える時に見ている本といいますかカタログが何冊かあるんです。
その中でも非常によく見るのが栃木県立美術館が1992年に出した『本の宇宙』これは展覧会のカタログでもあるんですが、実は美術と文学がどうやって結びついたか・・・特に60年代70年代に生まれた作品を特集してあります。
これの一番の柱は駒井哲郎さんと滝口修造さんのお仕事です。他にも北川健次さんなど、色々な詩画集や本をテーマにした作品を紹介してるんです」

●池田さんは本も発行してますよね。

 「単純に本が好きですから自分でも本を作ってみたり図録も作ります。これは展覧会の図録『枯野と幼年期の終わり』山口啓介ですが、本のスタイルになっています。
山口さんも文学が好きだし、ドイツに留学された時に文庫本を素材にして展覧会をやった事があるんです。それの延長で自分でオリジナルの版画入りの凄い本を作ったんです。
これは雛型(800円)です。それと若林奮さんの詩画集『花(静止しつつある夢の組織)』 若林奮 河野道代(1,800円) これは経文開きなんですが変っていて面白い本ですよ」

●やはり本なり文学者に興味がないとできない仕事だと思いますが、池田さんは文学青年だったとお聞きしましたが・・・。

 「若いときから文学青年かつ映画青年でした。本は手当たり次第に読みました。当時はカフカとかサルトルとかカミユとかそういう時代でしたから・・・。でも一番関心があった本は、『物質的恍惚』・・・作家の名前がでてこないな・・・」

●不条理な本がお好きなんですね。文学と美術は畑が違うけれど共通するものがかなりあると思うのですが、今の世代とはギャップがあるような気がするんです。

「今の世代が漫画やアニメに親近感があるとするならば、僕らは小さい頃から活字に親しむ機会が多かったから、他に媒体がなかったからそういう背景はあるでしょうね」

●池田さんは美術に入られた切っ掛けは?

 「難しいですね。基本的には文学は文字で表現するのだけれど、そうではないもっと身体的な部分から言えば文学では表現できない領域もあって・・・所謂(いわゆる)現代美術は人間の体の事を含めて表現していく訳ですから文学には捉えにくい部分(五感の内の身体全体で感じる部分)をアートが掴んでいるように思ったからですね」

●そういう意味では文学は頭的ですね。

「イメージの世界は深くは入っていけるけれど限定的ではありますね。具体的なものではなくてイマジネーションの世界だから具体的な『もの』との関係に置き換えて見ると美術は具体的な何がしかの『もの』として存在しうる訳だからその辺が文学とアートとは違う所がありますね」

●以前柄澤齊さんとお話した時に、『物質感』という言葉が私の中に残っているんですが、物質感とは物資な訳ですから絵の具の層であったり紙の・・・。

「紙というよりも色の広がりであっても素材感であってもいいのだけれど、『もの』しか持ち得ないものを際立ってこちらに向けてくれるのは物質でしょうね」

●それがないと人は動かされないものですか。

「それが全てではなくて、ある全体を考えてみると文学で捕まえきれる部分と、文学では収まりきれない外との関係をアートは持ってますよね。アートが全てをカバーできるかというとこれも又そうではない所がある」

●そうすると音楽と美術と文学が三位一体になるとバージョンアップしますね。

「そういう方向に向ってますね」

●今、活字離れが進んでいて本の価値が・・・。

 「本よりも言葉の重要性に対する意識の向け方というのが変質しつつあるというか。メールは簡単に出来るけれども、日常に簡単に出来る事は便利なようでいて本当の言葉の意味が通過してしまう所がある。
例えばメールではなくて手紙を書こうとするのならば一つ一つの言葉の質をもっと違う感じで捉えていきますよね。そう言う意味で言葉そのものを深く大事に考える事が日常的に抜け落ちてきつつあるんです。
色々なものを深く考える事は言葉を媒介にしなければできない訳だし、感じる部分は言葉以前の問題もあるけれど、『しゃべり言葉』であれ『話言葉』であれ感じた事をある考えにまとめる事は絶対に言葉抜きには出来ない事ですよ。まず最初に感じてそれを整理してより深く理解する為には言葉はどうしても必要ですね」

●ん〜。ここで感じるという事も難しい部分はありますよね。こういう風に感じていいのかなと・・・。必ずこう感じなきゃいけないなんて事はないと思うんですが、イマイチ自分に自信がもてなくなる時があるんです。

 「感じる事があって判るんです。美術は必ずしも感心するばかりではなくて拒否でもいいんです。僕は以前ドイツのダルムシュタットの美術館でボイスを見た時に、殆ど嘔吐感と眩暈(めまい)、吐き気、拒否反応を感じました。
でもそれは単純にいいなと思う事よりも後になって凄く重い事なのだという事が段々判ってきて、ボイスの美術館へ行ってから僕の現代美術の理解の仕方は変りましたね。兎に角その場にたって見ないと・・・感じない訳だから」

●確かにそうですね。唯、作品によっては何も感じない無反応もあるんですよ。何も感じない自分に嫌気がさすから一生懸命意味を探している。でも結局判からないんだと理解するんです。

「まず接して見ないとそういう事もわからない訳だから。沢山見て好き嫌いを感じて理由立てを考える事から筋道が作れてくると思いますよ」

●本を読む方は筋道を立てて絵を見ているなんて事もあるのでしょうか・・・。

「文章は書くべき対象として筋道がなければ書けないから、よく理解出来てれば文章に出来るという事です。ある皮肉を言えば美術に付随する文章が判り難いのは、もしかして本当に判ってないから判り難い文章になるのではないかと・・・」

- - - - それはとてもよく判ります。

●最後に池田さんこれからは・・・。

 「11月から本にまつわる事、展覧会にまつわる事をエピソードにしてギャラリー池田美術のホームページに『画廊通信のコラム』を月に二回ほど更新して書いていこうと思っています。あ! そうだ思い出した『物質的恍惚』を書いた作家はル・クレジオです。この本には影響を受けました」

- - - - え! それは何故?

「それもコラムに書きますので『迄ご期待』にしておきましょう」

どうもありがとうございました。

★今回ご紹介した二冊は「豪華作品の雛型」です。

 『枯野と幼年期の終わり』山口啓介 全32ページの図録本 800円
関連情報 http://g-ikeda-bijutsu-std.jp/2001/010122.html

 『花(静止しつつある夢の組織)』 若林奮 河野道代 図録本 1,800円
関連情報 http://g-ikeda-bijutsu-std.jp/2000/001010.htm

お問い合わせはギャラリー池田美術まで。
http://g-ikeda-bijutsu-std.jp/
〒104-0061 東京都中央区銀座1ー8ー8 三神ALビル4F
MIKAMI AL Bldg. 1-8-8 Ginza Chuo-ku Tokyo
TEL 03-3567-5080 FAX 03-3567-5083

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