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ホンとに本と。 林滋 / 『藤野一友=中川彩子 天使の緊縛』 河出書房新社

「そういえば林さん、お元気でしょうか? とギャラリー椿オーナーの椿原さんにお聞きすると「大分体調がいいみたいですよ。最近本にも紹介されたと聞きました」

え! 本ですか?
( 林滋さんは以前銀座で『彩林堂画廊』を経営されていた日本洋画壇の巨匠・林武画伯のご子息です。今は体調を崩されて・・・。ところで林さんは画商界では有名なコレクターです。(コレクション数は恐らく4000点を超え、その中心になるのはエロスを題材とした細密画であるらしい)

どんな本ですか?

「二科展に出品していた『藤野一友 』の作品集で紹介されたようです」

藤野一友? 知らないなあ〜。でも、久しぶりにお会いしたいな! と、いうことでお宅にお邪魔させて頂きました。

●お久しぶりです。今回伺いましたのは藤野一友の作品集で林さんの事が紹介されているとお聞きしまして・・・。

 「河出書房新社から、『藤野一友=中川彩子 天使の緊縛』 が今年の八月に出版されました。まだ出たばかりですよ。その中に今柊二(畸人研究学会主幹)さんが 『不思議な星々の動きの観察者 画廊主・林さんの話』 で紹介してくれました」

●それはどんなお話でしょうか?

「今さんと藤野一友の作品との出会い。
そしてその運命的な『作品と人の繋がり』を語っています。
以前僕の画廊で展覧会をした馬場京子さんの知り合いが今さんで、僕が藤野一友の作品を持っていた事から僕と話をする事になったんです。その辺の詳しい事はこの本に書いてありますから読んで下さい。  僕は高校生の頃 『裏窓』 『風俗草子』 などの雑誌を購読してたんですよ。
今でいうSM雑誌に中川彩子という作家が挿絵を描いていて、僕は中川彩子は知っていたのですが藤野一友は知りませんでした。
当時青木画廊での個展や二科で作品を見た覚えもなく偶々1970年の小田急デパートの『幻想画家展』で藤野一友の代表作がポスターになってそれを見て知りました」

●かなりダリっぽい絵ですね。

 「今となってはちょっと古臭いシュールの作品だけどね。マチエールは細かい人でした」

●中川彩子は藤野一友のペンネームなんですか?

「SM的な絵を描くのは中川彩子の名前で描いていたんです」

●女性が縛られたり拷問されたりしていますが、こういうのがカストリ雑誌の挿絵なんですね。

「通称カストリ雑誌とは戦後低俗な雑誌を一括して言った名前です」

- - - - 昔、小学校の頃、私の家の隣が本屋さんで 『風俗奇譚』 という雑誌を見た覚えがあります。表紙が変わっていたから覚えてるんです。

●でも低俗な雑誌といえども、今みたいなホンとに低俗な雑誌とは違うのでしょう。本の帯に三島由紀夫や澁澤龍彦が熱愛した孤高の幻想画家藤野一友と書いてあります。

「そう。三島は 『畸譚倶楽部』 や 『風俗草子』 を愛読していたようです」

●私も中学から三島由紀夫が好きだったんですが、林さんは三島の何処がお好きなんですか。
 「文学よりもその思想と行動、その生き方が好きなんです。だから生涯で一番衝撃的な日は、三島が自決した昭和45年11月25日なんですよ。僕は29歳で・・・あれは両親の死よりも衝撃的でした。当時三島が出演した映画は全部見ていましたし・・・」

●私も五社英雄の『人斬り』は見ました。三島の目が凄かったですね。

「勝新太郎やなんかと一緒にね。三島が主役じゃないけどヒットしたよね。
『憂国』 は三島の死後見たんだよ。僕は以前映画館から500メートル位しか離れていない所に住んでいたから映画はよく見たね。
三島の原作の映画も全部見たしね。僕の家は四代続いた国学者の家系、祖先の林圀雄が『皇国の言霊』を書いたそれ以来の憂国の士なんです」

・・・だから三島由紀夫との共通項があるんですね。

「父も『国語の建設』(講談社)を出しています。まあ、父は国語協議会の会長をしていたし・・・」

●そうですか。代々続いた国学者の家系でいらして、何故お父様は画家きになられたのですか?

「それは絵が好きだったからでしょう」

- - - - うっ! それはそうでしょうね。

 「でも、やはり血筋はあるもんです。国学者の家系でかなり三島由紀夫と似ているというか天皇に対する考え方が、内の家系は似てるんじゃないかな。三島は終戦の時に天皇の人間宣言で・・・それまで三島は天皇を 『現人神』 として捉えていた訳です。神格化してね。
そういう捉え方だから敗戦でがっかりしたんです。やはり 『現人神』 でいて欲しかった訳だから・・・。
僕は、三島由紀夫と自分の家系が接点があるとは五〜六年前まで知らなかったんだけど、父は三島の作品の装丁を何冊か描いていただけでは無く、
林房雄についで『憂国忌』の代表発起人になるよう要請されてたんですよ」

●ほう・・・いま「楯の会」はどうなったんですか。

「行った事はないけれど 『憂国忌』 は毎年やってるんじゃないですか」

●そういえば昭和45年11月25日はお酉様でした。何日かして自決した首の写真が週刊誌に載っていて私はそれを切り抜いてバックに入れていたのを思い出しました。

「あれね。森田が介錯したけど一回で切り落とせないで二三回切ったんだよね」

・・・もう亡くなられて32年・・・早いものですね。

●所で話を本に戻しますが、何部位売れてるんですか。

「初版7000部らしいけど・・・もう本屋には並んでないようだよ。中川彩子の名前で有名だったからね」

- - - - こう言っては何ですが・・・確かに藤野さんの油絵よりも中川彩子の挿絵の方がいいですね。体がハムのようだけど・・・。アドバルーンに吊るされているのや磔になっている絵はかなりエロティシズムを感じます。やはり実写よりも挿絵の方が淫靡で哀愁がありますよね。
この本の帯に書いてある「三島や澁澤龍彦が愛したもの」は、やはり絵画でなければ駄目で・・・実写ではイマジネーションを喚起できないでしょうから・・・。

●では、最後にコレクションはかなりの量とお聞きしましたが、まだ収集して居られるんですか。

 「今、整理をしていますが中々進みません。売るのが目的で集めた訳ではないけど・・・もう忘れられてしまった作家もいるね。残念だけど・・・」

どうもありがとうございました。

藤野一友の話から三島由紀夫の話になって・・・今、時代は完全に変わろうとしています。
イラクや北朝鮮の問題、自衛隊のこと、日本は様々問題が山積みだけど。もし三島由紀夫が生きていたらどう思ったでしょうね・・・それは判らないけれど。
それはさておき、実際のモデルを使ったSM雑誌やホモ雑誌が氾濫しても淫靡は感じないな・・・より薄っぺらなエログロばかり目立っているような気がするから。オサルスも今の日本を憂いちゃいます。

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