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RICA BANDOのニューヨークリポート (Vol.31)

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NEW YORK report from RICA BANDO - - - - - Mon, 15 Dec 2003

12月最初の週末、金曜日の午後から降り出した雪、
吹雪となって丸2日間降り続きました。
日曜には晴れ、絶好の橇日和、プロスぺクトパークへ新調した橇を持って出かけました。
ブルームバーグ市長も来たらしいのですが、私たちが帰った後だったそう、会えずに残念でした。

 
25 Jay street Brooklyn

さて、今回は、ヤン君について話をしようと思います。レポートというより、独り言に近いものになりそうです。
彼に初めて会ったのは、夏の終わり。
彫刻家の旦那の作品が野外彫刻展から帰ってきた時です。
仕事場の荷物用エレベーターに運び込むところを見かけた、と訪ねてきました。
自身もペインターだが、theXpoという名前で展覧会を企画していると自己紹介をしてきました。
http://thexpo.com/expo_1000.html

その後、ダンボーのアートフェスティバルで会場を確保したので、作品を出してくれないかと連絡がありました。
場所は、5000スクエアーフィートはある1階でしたが、改装の真っ最中、後数日の日程で終わるのか?という状態。
不思議に思って良く聞けば、まだ借りる本契約は出来ていないとのこと。
同じビルの2階に住んでいて、週5日はWall streetで働いている、職種は、証券アナリスト会社のエグゼクティブのアシスタント。

アートフェスティバル後、路上で彼にばったり会いましたら、フェスティバルで約3500ドルの売り上げがあった、と嬉しそう。
そのスペースを借りる為の頭金、2万ドルを銀行からおろしてきたところ、とのこと。
家賃は月5000ドル。まだ若いのに、本人からは育ちの良さを感じるけれども、かなり危ない賭けをしている印象、まあ、直ぐに首が回らなくなるだろうな、と思いました。
いったい、アーティストで心配なく暮らせるだけの収入を確保できる仕事があるのに、ギャラリーまがいの事をしなくてはいけないのか?
そんなことに時間を使うよりも制作した方が良いのではないの?
5000ドルの家賃を払うくらいだったら、半分のサイズだけれど、チェルシーに画廊スペースを借りられるのにと、疑問は後を絶たず。。。

また展覧会をするので作品を出して欲しいと連絡があり、あのギャラリースペースはどうしたの?と聞けば、大家は彼に貸してくれなかったのだそう。
本契約をした写真家達に1か月に1週末、750ドルで場所を借りて展覧会を継続することにしたのだとのこと。
それだったら、インタビューさせてね、と約束を取り付けました。

吹雪の中、会場へ。
写真家がスタジオに使っているのでギャラリーには申し分なし、1週末、3日間だけの展示です。

Ground floor view 1
Ground floor View 2

彼のアパートメントでも展示をしているので、2階へ。
オハイオ生まれのボストン育ち。
私の想像どおり、ハーバード大学出身でした。社会歴史学専攻。
マスターは、ロンドン、オックスフォード大学、哲学で取得しています。

なぜ、theXpoという展覧会を企画しはじめたかというのは、Sep.11 アタックが切っ掛けだったのだそうです。
人々が理解しあえない事が原因、アーティストとして自分が出来ることは何なのか?
制作するだけでなく、作品をメッセージとして多くの人々の目に触れるようにすることをしていかなくてはいけないんだ、そう考えると、いてもたってもいられなくなり、彫刻の展覧会に関する提案書をニューヨークの主要美術館に送ったのだそうです。
その中で唯一、メトロポリタン美術館だけが返事をくれたそうで、2時間あまり真剣に話を聞いてくれたそうです。
メトロポリタン美術館は、社会学の一部という美術に対する姿勢が基本にあるから、無名の自分の話でも耳を傾けてくれたのだと思う、そう言っていました。
このことにより、提案を人に与えるより自分自身でしていこう、と決心したそうです。
そして、ダンボー内の店舗にアーティスト作品を飾る企画を初めとして、チェルシー、トライベッカ、チャイナタウンでも場所を確保して展覧会をしてきたそうです。

きっと、とんでもなくすごい論文だったのでしょうね。
メトロポリタン美術館以外の美術館の人はまるで理解できなかったとか?
社会歴史学と哲学を勉強してきた生え抜きのエリートの行き着く先が、theXpoという展覧会の企画。

以前会った時に、フルタイムの仕事を辞めて、theXpoを仕事として出来るようになることを願っている、と言っていたので、5000ドルの家賃を払うつもりだったら、チェルシーに画廊スペースを借りられるけれど、その方が画廊として仕事しやすいのではないの? の質問には、チェルシーのように商業的に確立してしまっている場所には興味がないんだ、この発展途上にあるダンボーというアートコミニュティを基盤にして、一緒に発展していく事に意味を感じるんだ、とのこと。

私は、アーティストとして制作する時間が1分でも欲しい、惜しい、と思って生活しているのだけれど、どうして他のアーティストの為に時間とエネルギーを使って展覧会を企画しようと思うの?
と聞きましたら、自分は、社会学を専攻してきた人間だから、アーティストということで社会から孤立してはいけないんだ、作品を売る、そのことで社会と繋がっていかなくてはいけないと考えるんだ、との答え。

Jan Larsen & his works Apartment view 1 Apartment view 2

私の恩師、長沢節氏と全く同じ思想でした。
作品を只であげてはいけない、売らなくてはいけない、そうすることで社会と繋がっていくのだからと...
20歳の頃に聞き、心に残る言葉でした。

話を聞き終わってアパートメントを出る時に、彼がドアを開け放したままにしていたのに気が付きました。
さすが、オックスフォード出身、と感心しました。
それにしても、運悪く吹雪の週末。
これでは展覧会を見に来る人々は期待出来ない、今回の場所代は本人の持ち出しとなるかな?
また、作品を出してくれと言われたら、また、はいはい、と渡してしまうのだろう、あの品の良さと誠実さがそうさせてしまうのだろうな。
誠実、それが世の中を良く変えていく精神であるから。。。

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(c) Photo - Report. RICA BANDO , gaden

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RICA BANDO
1984年よりニューヨーク在住。その間、ニューヨークでのグループ展など多岐に渡る活躍。
作品はハンタードン美術館をはじめ多数コレクションされている。
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