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オサルスのおすすめランチ ランチdeチュ その110

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いなり寿司 60円 卵巻 450円

三花
東京都文京区根津2-3-15 TEL03-3821-6285
午前11時30分〜午後6時。定休土曜。

 前後の話は忘れてしまったのですが、たまたまコバヤシ画廊でオサルスはボランティアと言われるのが嫌だという話をしていたら、『こちらの方は、本当のボランティアをされている方ですよ』 とスタッフの方から紹介されて。
『どのようなボランティアをされているんですか?』 と質問しましたら、虐待を受けた子供達に芸術療法をしているとの事でした。

・・・芸術療法ですか?

「芸術療法というのは、音楽や絵画などを、こころや脳のさまざまな問題の治療や回復・更正に役立てようというものなんです」


芸術療法の話を聞くのなら憩いの場である公園でのランチがいいのでは、という事で場所は浜離宮恩賜公園に。

 外でランチだったらお稲荷さんが定番?。人情味あふれる下町、根津の三花さんで買ってきました。

 「私もお弁当を作って来たんですよ」

 ・・・え?、凄いですね。ちゃんとお重に入っている。オサルスは料理を作るよりも作ってもらいたいほうだから・・・歓迎します。

 「以前イギリス人の友人が料理を作ってあげる事は愛情だと言っていましたが、最近、その事についてよく考えるんです」

 

 その三花さんは品書きが書いてあるだけで、注文すると、奥で奥さんが稲荷をつめ、巻物はご主人がカウンターで巻いてくれます。のれんには関東風の白抜きの文字。
『その濃厚味の中でもひときわ濃厚にして個性的』 と本にも書かれてあるように、黒糖なのかなぁ〜こくのある甘さと醤油の辛さが酢飯に染みて美味しい。(いなり寿司60円、太巻350円、卵巻450円)
早川光さんの 『東京名物』 という新潮社の文庫本で紹介されている。
 大きいから二つでおなかいっぱいになるのに、またあの味を味わいたいと思ってしまう。
 ご主人の森友衛さんが昭和29年に始めた間口一間ほどの小さなお店。昭和29年というとかれこれ半世紀、 『一日六〜七百個も作るいなりずしが連日完売してしまうほどの大人気…』 とか、自身の生業として踏ん張っておられる姿がお客さんに通じるんだろうなあと。

・・・ところで大平さんは何故絵を描こうと思われたのですか?

「最初は作家になろうという意志はなかったんですね。どちらかというとまともな社会人、完璧な母親になる事に憧れていたんです。でも19歳の時に挫折して、落ち込んで自殺したいと思ったんですよ。婚約者もいたのですが別れました。
騒がれて親に迷惑を掛けたくなかったので、ドイツに行ったんです。旅先で死ねたらいいなって思ったんですが、海外で死んだ方が目立つ事に気がついてなかったんですね。当時は19歳ですから、それでドイツに行って色々な人と接して、はじめて正義だとかモラルは国や時代で変わってくると知ったんです。
違うんだと・・・それまで一つの事を信じて、日本的な理想的人間像を信じていたんですよ。それが崩れた時に生きていけるかなと思ったんです。素晴らしい人間で無くても尊敬されるような人間で無くてもいいから生きていけるかなと思ったんです。生きていく上で励みとして絵を描いていこうと。その後、地方の公募展に入選して、それが切っ掛けとなって制作中心の生活が始まりました」

・・・それまでどういう作品を描いてらしたんですか。

 「最初の頃は虐待を受けている子供の様子だとか・・・。当時は虐待という意識はなかったんですけれど・・・ずっと、心に傷を持つ小さな子供の絵を描いていました」

・・・何故虐待という言葉が出てくるのか解らないんですけど。

「気になって仕方の無い対象が子供だったんです。にこやかに幸せそうにしている子供ではなくて、何かあったのかなという表情や仕草をしていたり、愛情を求めているのに自ら距離を置いてしまうような子を意識してしまうんです」

・・・それはそういう経験があったという事でしょうか。

「私にもそういう経験があったからかもしれません。意識していたわけではないんですけれども、一番興味が沸いたのはそういう対象だったんです」

・・・それで子供を描きはじめて、芸術療法に出会ったのもそこから派生してきたんですか。

 「自分の過去がそうだったんじゃないかなって気がするんですよ。芸術療法には色々な効果があるんですけれども、対象によって異なるんですが、例えばトラウマを受けた子供には特に感情発散(カタルシス)だとか内面の秩序化、自尊心の回復が必要なんです。私もそういったものを求めて描いていたんではないかという気がするんです」

 ・・・虐待をされた方とか精神の病気の方の事を興味本位で聞いていいのかという事もありますし、病気の種類もこちら側に知識がないので、内面を閉ざしている方達なのかなというぐらいしか解らないのですけど。

 「治療としての芸術療法(アートセラピー)はストレス障害・人格障害・精神障害などの心の障害、痴呆症・自閉症などの脳の障害のある人々を対象に実施されているんです」

・・・実際に良くなるものなんですか。

「それは難しいところなんです。心の治療というのは、目に見えた効果がハッキリ出て来ないじゃないですか。ですからいい加減にする事もできるし、また信用もしてもらえないという点で難しいです。効果があったのかどうかは、長期的に見ないと解らないですし、効果がある事を理解していただくには過去の事例で示すしかないですね」

・・・診断の基準はありますか。

「描画テストがありますが、検査者の熟練度に依存するところがあり、信頼性と妥当性に問題があることが指摘されています。描画テストはとても有益な手がかりとなりますが、描画のみで診断するのは危険です」

・・・これだという答えがないから難しいですね。

「心理学が専門の方による芸術療法は信用されやすいですが、アートに対する造詣も深くないと、子供の絵を見て共感できないと思うんですよね。
私の場合は子供を専門に研究しているのでついつい子供の話が多くなってしまうのですが。虐待を受けて自尊心を失った子供には、こころから共感して受け入れてくれる人が必要なんです。
本当に対象にとって効果があるものなのかどうか、目に見えないものですから誤魔化せてしまう部分もあるんですね。そこら辺を自分の立場を確立するのに利用するようなことがあってはならないと思います。私自身、日ごろ気をつけている事です」

・・・ご自分で絵を描く事とアートセラピーの部分で葛藤はありませんか。

 「芸術活動とアートセラピーはまったく違うものだとわけて考えているので葛藤はありません。アートセラピーでは絵を教えるのではなくて、クライアントが安心して、自由に内面の表出が出来るようサポートすることを心がけています。
ただ、アートセラピーのクライアントが芸術家になれないという意味ではないんです。彼らが自立して、自分で主題やマテリアルを選んで、自主的に制作・発表が出来るようになれば作家になる事は出来ると思っています。作家も、例えば制作する上で感情発散だとか達成感だとか内面の秩序化の効果を感じていらっしゃる方は多いと思うんですよね。そういう面では共通する点もあるんです。
 私自身も最初はアートセラピー的な意味合いで制作していた部分があるのではないかと思うんです。制作していくうちに自分自身が改善されていったわけですから、それで効果がある事を信じているわけなんです。ですから、受け入れられるという事が、こころに傷を持つ子供にとって、どれだけ重要な事か、秩序化する事がどれほど重要な事かが良く解っているので、言葉で表現できない子供達には絵を描かせるなり何かを作らせるという事の必要性を強く感じています。
実際に虐待を受けた子供達の絵を見ていると深いです。彼らが作家になったら面白い作品を描くんじゃないかと思うんですよね。そういう可能性を感じているところもあります。これはあまり理解されていない事かもしれませんが、彼らには抑圧されたエネルギーがあるんですね。
それを何処かで発散しなきゃいけないんですよ。それが上手くいけばいい方向で発散できる。もしいい方向で発散できれば彼らはすごく評価される立場になるかもしれない。被害者をケアーをするという気持ちだけでは無くて期待もあります。
私の今回の個展の作品の題名にもなっている『創造とモラトリアム』はそこに通じているんですが、心理学の専門家でマーシア(J.E. Marcia)という人がいるんです。彼女が青年期におけるアイデンティティの状態を四つの段階に分けたんですよ。

1)アイデンティティ達成型(危機を経験し自分自身の解決に達した上、それに基づき行動している。関与すべきものを見いだしてる状態)
2)モラトリアム型(関与すべきものを見いだそうと、危機のさなかにあり、積極的に苦闘・模索中である状態)。
3)早期完了型(親や社会の価値観を無批判に受け入れることで関与すべきものをみいだしてはいるものの危機を経験していない状況 )
4)アイデンティティ拡散型(アイデンティティに関与せず、苦闘の感じをもたない状態。危機前なら未熟.危機後なら無気力な状態)

という4つのステイタスに分類したんです。
あ、その前にエリクソン [アメリカの心理学者エリクソン(E.H.Erikson) は人の一生は生まれてから死ぬまでがすべて成長であるとし、乳児期・幼児期初期・遊戯期・学童期・青年期・前成人期・成人期・老年期の8つの発達段階に区分した。これをライフサイクルといい、各段階ごとにそれぞれの課題(タスク)があるとした。] の事を話さないと、
私の個人的意見としては年齢を限定したくないのですが、一般的にモラトリアムは青年期(12〜20歳頃 自我の同一性アイデンティティを得る時期)にあたります。エリクソンはこの時期にどれだけ危機を乗り越えたかでアイデンティティの達成が変わってくるという理論を発表したんです。
マーシアはエリクソンの理論は青年期の実像をあまりに限定的にとらえていると考え、それをより多様で具体的な角度から論じたのですよ。彼女は早期完了型は支配的・権威主義的な振る舞いをするが、切迫した状態に追い込まれると心理的な弱さが露呈すると言っています。結論的にいえばモラトリアムの時期に危機をたくさん乗り越えている人の方が、よりアイデンティティを高いレベルで達成できるといわれています。これは文化や社会、国家などについても言えることかもしれませんが、危機を乗り越えた人の方がより深いレベルで人間も成熟すると思います」

・・・そうすると今虐待を受けている人達が大人になって絵を描くようになったとしたら、面白い作家が出るかもしれませんね。

 「ただ、エネルギーを抑圧するのではなくて、出し方を覚えないといけないですよね。社会に認められた方法で出す。心理的な危険や不安から自己を守るために無意識のうちにとるこころの働きとして防衛機制 [フロイトが提唱した概念。自らの心理的な安定を保つためにとる心理的メカニズム。強い恐れや不安や葛藤、そして欲求などは、環境への適応を困難にする。そのためこれらを低減しようとする働き抑圧・逃避・退行・解離・合理化・投影・昇華・補償などが心の中に起こる。]
と言うものがあるのですが、これらのほとんどは病的に用いられる場合があります。健常者に用いられるとされる昇華(反社会的な欲求や感情を、社会に受け入れられる価値ある物へと転じること)が出来るようにならないと。あと補償(劣等感を他の方向でおぎなうこと。勉強が苦手な子供が、体育の授業で頑張るなど)の経路が早い時期に形成されるように導いてあげられるといいですよね」

 ・・・どうもありがとうございました。

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