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山猿うどん 700円
おかた茶屋
群馬県甘楽郡下仁田町大字東野牧2641-1
TEL 0274−84−2646
http://www.okata.jp/
何か最近太ったような・・・。身体が重いんだよね。 ・・・何故彫刻家になろうと?
・・・ええ。 「 大好きだったんです。まあ、それ以前から仏像オタクだったんですが・・・」 ・・・山岸涼子の『日出処の天使』と仏像ですか。 「色々な人からインタビューで、この話をするんですけど誰も載せてくれないんですよ。子供の頃は小中校を含めて美術は好きでした。始めは建築家を目指していたんですが、高校の時美術部でデッサンを勉強したら面白くなってしまって、勉強は奈落の底でしたから、段々実技に比重を置くようになって美大に行きたくなったんです。仏像好きだし、それなら彫刻科だろうって・・・」 ・・・その後東京芸術大学大学院の保存修復技術専攻科へ行かれたんですね。 「なんせ仏像'sオタクですから。大学生の時から皆が夏休みや冬休みにヨーロッパに行っている時に、お金を貯めて一人で趣味の古寺巡礼。京都・奈良に仏像を見に行ってました。ただ自分が外国に行った時に思うんですが、やはり日本人の欧米信仰へのトラウマはあるなと・・・今もちょっと思うんですが、美術関係の人や学芸員の人達と話したりすると、これは私のある意味偏見かもしれませんが、皆さん外国の事は詳しいけれど意外と日本の事は知らないんですよ」 ・・・自分が今いる場所だから知らないとね。といっても私は仏像の印をふむという事がよくわからないんですが? 「私は仏像を見るのが趣味。だから教科書的な見方はしてないので知らないんですよ」 ・・・東大寺の仏像を彫る時はどうだったんですか。 「だから大変だったんです。ゼロだから(笑)。勉強しなきゃいけなかったから(笑)」 ・・・でも大平武男さんが撮影された東大寺の俊乗堂で重源像を模刻する上原さんの姿を拝見して感動しました。因みにあれは一心不乱に勉強されている姿だったんですねぇ(笑)。 ハイ! お待たせしました。山猿うどん(700円)です。 こちらの『おかた茶屋』は、上原さんのお姉さんのお店。
・・・上原さん。いいですね。毎日こんなにシコシコした美味しいコンニャクが食べられて? 「え、そうですか。慣れるとそうでもないですけど」 ・・・それは贅沢というものですよ。 さてお薦めの山猿うどんは、山菜、しいたけ。小松菜・きんぴらがたっぷり。豚肉のスライスもはいって、とにかくボリュームが凄い。おつゆの色が濃そうだから一見辛そうに見えるけど。中々いい塩梅で美味しかった。ごちそうさま。 ・・・ところで今までずっと個展を拝見してきて、最初の頃の作品と随分変わってきましたよね。去年の個展の作品は、下仁田で生まれて、ずっと暮らして、コンニャクじゃないけど、そこに根ざして養分を得ながら、生活に密着した作品を作っているんだなという感想をもちました。
・・・なるほど。人が生まれてそこで生きていくのは、決してかっこいいものではないし、泥臭くしか生きられない。確かに人の本質は泥臭さかもしれないですね。 「今まで自分の作っているものは嘘を塗り重ねているだけではないかと思っていたんです。美術を作っている自分と生活をしている自分とズレがあったんです。そのズレを少しでもいいから縮めたかったんですよ。 ・・・me,tooです。あれ嫌い(笑)。 「田舎の人は、人がよく見られますが、逆ですからね。その見たくないせこさを引っ張りだしてみたい(笑)。人が拍手をする部分では無くて、隠している部分、お互い内緒にしている部分を引っ張ってみたいというか。それを見据える事で、制作と生活のギャップがもう少し縮まるんじゃないかと。 ・・・廻りはおしゃれで洗練された物の方が喜びますよね。作品と向かい合う事によって暗部を見せつけられるのは嫌だものね。先日岡本太郎美術館の方とお話したんですが、岡本太郎は、“芸術はいやったらしくなければならない。きれいであってはならない・・・”といっています。ただ心地よくなければ売るという事は難しくなるかもしれませんね。
・・・ある意味重い荷物を背負うわけだから、これからは時間が凄く掛かるかもしれませんね。自分の作品が時代に合うまで待たねばならないわけだから。 「それをやりながら結構動物の作品の展覧会をしようかなと密かに思っているんですよ(笑)。精神のバランスなんです。もの凄い重い仕事をすると逆に軽い仕事をしたくなったり、多分両足を踏みながら制作していくと思うんですけど、本質としては先ほどお話ししたような仕事をしていきたいと思います。ただ自分が辛くなるから、四六時中それを見ていられないんですよ」 ・・・皆、四六時中存在とはなんだとは考えてられないですよね。でもね。最近安部公房の『砂の女』を読みまして人生ってこうだよね。と、しみじみ思いました(-_-)。ちょっと暗かった(笑)。話を少し変えますが、“場”の問題はどのように考えていますか。空間は立体にはとても重要ですよね。場を占有するものを作れば場が生きる。場については如何でしょう。 「難しいですね。立体の展覧会は場所ありきなんです。私は画廊での発表からスタートしましたから、辛い話ですが画廊の展覧会は画廊の搬入口から計算して、搬入コースを考えるから寸法が限定されてしまうんです。これは辛いです。大きい場合は組み立てまで全部考えるんですよ。たまにはバーンと大きな作品でやってみたいですよ。でも不可能です。 ・・・そうですか。ただ白いスクウェアーな空間があって、作品を置くだけでは場が成立しないという事ですね。立体の場合はこの問題は深刻ですよね。でも上原さんが現代美術の空間に拘る理由は何故でしょう。 「拘る理由は、単純に今の時代のなかで作品を作っていきたいんですよ。ただそれだけです。でも今のような現代美術をしようとは思わないんですよ」 ・・・わかります。ただ、現代美術は閉鎖的な側面をもっているから、もっと開かれた場所、何かが生成するような場所がいいですね。現代の美術を見せる“場”は、あるようでいて少ないような気がするから。
・・・人といえば、“下仁田ーおじい”の作品は肩の傾き加減がすごくリアルで、その方の人となりが表現されていましたね。変ないい方だけど背中がある彫刻は人が出るような気がする。私も鎌倉時代の彫刻が好きだから、やはり前があって後ろもなくちゃ嫌なんです。 「背中はものを語るから凄く好きです」 ・・・色々な作家を見ていて思うけれど彫刻は緊張を持続するのが大変じゃないですか。 「具象をやっている人は、1回手が楽をしちゃうともう元には戻せないから、手が楽をしちゃうと緊張感を戻すのは大変です」 ・・・でも食べていかなきゃならないから数も作らなきゃならないし、緊張感を持続しながら数を作っていく難しさはありますね。 「私は彫刻だけで食べて生きたいから、結論としてはいいものを作れば売れるという発想は永遠にあります。それにゆっくり攻める方がいいです。リンクするのが早いとつらいです」 ・・・そうかもしれない。最後に去年お子さんが生まれて、子供を持った感想を一言。
あ! そうなんですか。そりゃまた大変だ。次回の作品期待しています。 上原さんと話をしていたら、何故か土門拳を思い出してしまいました。私は土門拳の『風貌』という写真集を持っているんです。因みに仏像を撮った作品は好きじゃないんですよ。 上原三千代 関連情報 2003.9 2000.12 2000.6 作家紹介 http://gaden.jp/arts/UEmi.html |