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オサルスのおすすめランチ ランチdeチュ その120

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ハンバーグステーキシュバール風 1050円

京橋 モルチェ
東京都中央区京橋2-2-8 明治屋ビル地下1階
TEL03-3274-3891

何故人間の目は二つなのに、カメラのレンズは一つなの?
はてな? と浮かんだ疑問。
じゃあ、カメラにレンズがふたつついていたらどう見えるの?
早速ネットで検索してみると。撮影された写真も掲載されていて、二枚の同じ画面を立体裸眼視で見るというもの。
立体裸眼視といえば30年くらい前に、ウオーホルの “悪魔のはらわた” を見る時に赤と緑のめがねをかけて見たのを思い出してしまった。
これって3D画像を見て眼球の筋肉をトレーニングするのと似ているんだよね。
より目になっちゃうよ (>_<)。

今日ご紹介するオノデラユキさんの作品展
[ 2004. 9/3-30 “オノデラユキ 関節に気をつけろ!” ツァイトフォトサロン ]
[ 2004. 9/11-10/9 オノデラユキ作品展 “『Roma-Roma』左目のローマ-右目のローマ” il tempo ]
を拝見しながら、結局カメラには脳みそがついていないんだと、ハタとオサルスの脳は気がついたんです。聞いてみました。

・・・ふたつの展覧会を拝見して身体観を凄く感じました。“ 『Roma-Roma』 左目のローマ-右目のローマ” の作品は目と移動、“関節に気をつけろ!” はどうにもならない身体。逆にいえば意識では統御出来ない身体を統制しようとする脳を感じたというか・・・脳は空間的時間的場所に制限されていて、移動するには身体を動かさないと無理ですものね。

 「 “関節に気をつけろ!” はスタジアムでプレイをしている選手達の徹底的に見られている身体を、“Roma-Roma” では見る事は見る事でも、キャラクターのある個人を廃した純粋な視覚。また写真を撮るには身体が移動してそこに行かなければならないという事で移動を。移動というものは、ある意味人間の能力を超えたものでもあると思っていますから、了解出来ないのと同時に快感やミステリアスな部分を感じるので以前から移動はテーマにしたいと思っていたんです。
二つに共通するのは身体性、見る事と見られる事。どちらもカメラの構図に凝縮出来るようなテーマではあるんですよね。でもただそれだけではなくて色々な事が絡みあっています。例えばil tempoで展示した作品は人着 (じんちゃく) といって昔カラー写真が無かった頃に、モノクロ写真をリアルにするための技法で・・・」

・・・人着って何ですか?

「人工着色の略なんです。人着写真とか人着映画とかあったんですよ。その頃は勿論カラー写真は無くて、モノクロ写真は現実のものとは違いますよね。それで視覚に出来る限り近づける為に絵の具で色を塗って、その時代にはリアルなものだったんです。
今はカラー写真があるので、いくらカラー写真に色をつけてもカラー写真のようには見えますが、今私たちが普通にリアルに思うものとはどうしてもズレるんです。その辺のズレが面白いなと思って、そこでまた距離感とか出てくるし、そういう意味では両方の作品のなかに問題系がいくつかの要素として絡まったりしているんです。でも一番強い所で深くつながっているのは身体性です」

・・・人工着色というのはどうやって着色するんですか。

「凄く細い面相筆を使って油絵の具で着色します、作品の大きさはこのくらいなんですが、肉眼のレベルで細かく描けていても本物ぽくならないんです。だから肉眼で見て描いたら駄目なんですよ。頭にルーペをつけてそれで拡大しながら丁寧に、花に色をつけたり柵を塗ったりとか・・・ルーペのレベルで見てきちっと塗れていると肉眼で見た時に、本物の写真のように見えてくるんです。だから凄く時間がかかりました」

・・・え! あれカラー写真じゃないんですか。

「自然光で見ると違うんですけど、ギャラリーのライトは黄色いから、緑や赤や色が全部おさえられてしまって出ないんですよ。自然の光で見ると写真では出ない発色のいい色がかなり出るんです。それにカラー写真と戸惑うぐらいの精密さを出そうと思っていましたから。
塗るという行為のなかに創造的なものは全然無くて、むしろ昔の人着技師が、今ここにいたら、きれいに塗っておいて下さいと頼むくらいの感じで、淡々と丁寧に塗り続けました」

・・・いつもモノクロ写真なのに、今回のil tempo の作品はカラー写真を撮影されたのかとばかり思っていたんですよ。(やはりオサルス迂闊です) モノクロ写真に拘る理由はなんでしょう。

 「最初にモノクロ写真を始めたのは20年以上前に遡りますが、多分技術的な面で、自分でフィルム現像したりプリントしたかったからです。モノクロというのは、カラー写真にあるようなリアリズとは違う独特の魅力があるし、しかも自分で色々コントロール出来るからです。」

・・・il tempo の展示の作品数は108枚でしたよね。ステレオカメラで違う場所を撮影するのもたいへんだけど・・・といいつつ私はステレオカメラを見た事も撮影した事も無いんです。

「私はリアリストというカメラを使っています。本来のステレオカメラの撮影では、ふたつの写真がパッと見は殆ど同じで、少しづつずれた状態で写るのです。でも今回は左目はスウェーデンのローマを、右目でスペインのローマを撮影しました。
左目の写真を撮る時はもう一つのレンズに覆いを被せて露光させないようにして、全部撮り終えた時にもう一つのローマに移動してフィルムを巻き戻して、今度は反対側に覆いを被せて撮ったんです。これとこれを合わせたいというのは不可能ですから、偶然に二枚の写真が繋がって出来たという事です」

・・・偶然といわれましたが、拝見していて道の遠近感などかなり関係性を感じました。

「不思議なんですよね。両方の風景や構図が凄く決めたように合ってしまうのもあれば全然違うものもあったり、同じ場所で撮影したようによく似てしまうものになったり、でも本当に偶然なんです」

・・・でも違うふたつの場所でも作家の視点はひとつですものね。だからどれを切り取っても作家の視点が見えるんでしょうね。

「撮影する時には、ここの風景は “いい”、この場所は “いい” という気持ちでは撮っていなかったんです。ふつう写真家の仕事は人にもよりますが、何百枚も撮影して最後にいい写真を選ぶ選択作業だと思うんです。でもそれを一切否定したっかったので自然に適当に歩いてパチリ、またちょっと歩いてパチリと撮りました。
だから一枚も後で選んだり落としたりせず、もし枚数が凄く少なくて5枚しか全部で撮らないというのならば、ここはやめておこうとかこっちにしようとか考えると思うのですが、やめておこうというのが無い状態で、自然に歩いていたら108枚の数になったんです。村は全然違う場所だったんですが、大きさの規模が偶然同じだったのかも知れませんね。グルッと回って両方とも108枚で終わりました」

・・・108というと煩悩の数ですね。

「そうなんです。全くの偶然なんですけどね。 現像していて後で気がつきました。108枚わざと撮ったみたいだねって、でも偶然なんです」

お待たせしました。 “ハンバーグステーキシュバール風(ライス付き 1050円)” です。

こちらのレストランの創業は明治18年。駅 (地下鉄銀座線京橋駅) とビルが一緒になった日本初の建物だそうです。左を見ると一見昔ながらのデパートの大食堂を思わせる懐かしさなのに、右側のバーに洋酒がずらりと並んで不思議な雰囲気を醸し出しています。

「シュバールとはフランス語で馬という意味ですよ」 とオノデラさん。さすがにフランス在住の方だ。
でもハンバーグの上に馬が乗っているんですか? う〜ん。(-_-;) 悩みますね。
いえいえ “馬に乗った天使” をイメージしているんですって(笑)。

目玉焼きにデミグラスソースがかかっていて写真はきれいに見えないかもしれないけど、卵をつつくと黄色い色がパーッと弾けて。一瞬天使の微笑みがキラリと。

「昔懐かしいハンバーグの味ですね。タイムやセージの香辛料がきいて正統派の味、さすが石原さんのお薦めだけのことはある。美味しいです。以前ツァイト・フォト・サロンは日本橋にありましたから、昔ながらの洋食屋さんとかが結構残っているんですよね。石原さんはこの味が好きなんじゃないですか」

 そう今日、こちらのレストランをお薦めして頂いた方は、ツァイト・フォト・サロン( http://www.zeit-foto.com/)の石原さんなんですよ。相変わらずお忙しいそうですね。

・・・ホントに香辛料がきいてる。それにデミグラスソースのコクのある色が食欲をそそりますね。美味しい。少し味が濃いからご飯にはあいますね。
フランスではやはりフランス料理を召し上がるんですか?

「私はレストランには殆どいかないんです。近くに中国のマーケットがあるから色々手に入りますので、和食・中華・東南アジアの料理などを家で作っているんですよ。それにフランスはレストランでのお食事がフランス人にとってのハレみたいなもので、毎晩レストランに行くわけではなくて、普段はパンと乾燥したサラミとにんじんでもいい。そんな感じで結構質素なんです。
その代わりレストランに行くときはコース料理を注文しますが、お店の人にこれはどんな料理か悩みながら色々聞いています。食事は二、三時間かけて食べるレジャーみたいなものだから、値段もそれなりにしますね。日本の方が外食の文化は豊かなんじゃないですか。気軽に誰でも食べるから。
昼間食べる料理は、安い定食屋さんはあるけれど、フランス料理というともうちょっと高級な感じはします」

・・・フランス人はワインを水代わりに飲むものでしょうか?

「そうですね。ワインといえばフランスですよね。でも今若い人達はワイン離れが始まっているみたいで多少変化がありますね。何処の国もアメリカナイズされているんじゃないですか。
ビールを飲んだり、何かで割ったようなものを飲んだり、一時日本でも日本酒というとオヤジの飲み物みたいにいわれていた時があるじゃないですか。ワインはそれと同じ感じですね。日本人にはおしゃれなものと感じても地元の人にはそうでもないみたいです」

・・・どうしてパリを選ばれたんですか。

「渡仏したのが93年でした。ニューヨークという感じのムーブメントは80年代でしょ。パリといえばベル・エポックだからさらに古い時代に栄えた所なんだけれど、フランスは地理的にもヨーロッパの情報が交差する所だし、食べ物も美味しい。今、市のアトリエを借りていますが、税金を払いながら制作していくのには、凄くシステムがしっかり出来ていて、そういう点ではいいですね。それに日本に帰ってきたら暮らせないですよ。お金がないから」

・・・それじゃオサルスと一緒じゃないですか。
ところで話を戻しますが、偶然が必然になりうるというのが面白いですね。サッカーもルールはあるけれど何が起こるか全くわからないから偶然性がありますよね。先日のオリンピックを見ていてシナリオは無いんだけれど、何故かシナリオを感じてしまうというか。

 「そうですね。いま体験している時だけが今見ている瞬間であって、それが終わった時点ではシナリオみたいに見えるようになってしまう。スポーツ写真は、基本的に凄く言語化した決まった型があるから、写す写真は大体決まってくるんです。
今回の “関節に気をつけろ!” は、私がスタジアムに行って撮影したわけではなくて、ひとつの試合のムービーを使って、無数にあるコマ数から一コマを選んで出来たものです。 それを選ぶ時には、その瞬間を待っていて撮る写真の仕事と同じ事だなって思ったのですが、普段見ているのは全部が繋がっているものだから、試合の文脈とか言語化されたゴールから外れたかっこわるいものは絶対見えていない。 記憶にも無いし、私たちの視覚から落ちているんです。
それで改めてひとコマを見てみると全然サッカーじゃないんですよ。例えばボールを取ってしまったり、増やしたりすると、そこに写っている人間の関係性がちょっとした事でバラバラになってしまうし、身体のポーズは全然いじっていないんですけど、考えられないような身体のポーズをしている。徹底的に皆に見られているのだけれど、記憶に無い、落とされた身体が面白くて・・・」

・・・ “関節に気をつけろ!” を初めて拝見した時に、テレビの番組が終わってザーという砂嵐の画面のなかでサッカーをしているように感じたんです。

「砂嵐のサッカー場っていいですね(笑)」

・・・砂嵐の中のサッカーだから見づらいし、例えばオリンピックならば身を乗り出して見てしまうのに、身を引いて見てしまうというか。

「そういう文脈というのが、全部削ぎ落とされているんでしょうね」

・・・それが面白いと思ったんです。

「チームのユニフォームは白くしてしまって、チームはまったくわからないし、選手の顔もいじっていますから存在しない顔になっています。ムービーはまだ作っていないんですが、もう少し長い時間にしてつなげると、一コマづつ顔が変化するから顔がブヨブヨ動くような変なものになると思うんですけど、本当にアイデンティティーというか、選手の顔もチームもわからなくなるし、応援する要素も無くなっている。しかもどういう状況かという文脈も外れてしまっているんです」

・・・CG的な操作をされているんですか?

「コンピューターを使ったのは、違う顔にするという事と、チーム名を消す事、後はボールを無くしたり増やしたりしたり、そういう効果としてです。身体はそのものなんです。身体は実際今行われているその時のままです」

・・・意識で制御出来ると思っても身体に裏切られる事はありますよね。死ぬ時ってそうなんじゃないのかな。

「心身一緒といっても、コントロールしきれないですね」

・・・先日ある本に情報は止まっているが、人は動いていると書いてあったんです。普通は逆のような感じなんですけどね。じゃあ、石や机は止まっているのかといえば、ミクロの世界では波動関数の収縮のプロセスというのがあって動いているんですって、それを読んで目からうろこだったんです。

 「人は視覚に頼ってますからその限界はありますね」

・・・いくら石が動いているといっても石は石ですから(笑)。でも動いている人間がふっと立ち止まって考える瞬間があるとすれば、それは何かを問う時じゃないかと思ったんです。例えば美術であれば作品が問いかける。それを鑑賞者がまた問いかける。その関係性から何かが生成するんじゃないかと・・・。

「見る側がいなければ、作品がそこにあってもただの石ころと同じですから」

・・・そう波動関数の収縮のプロセスなんていっても、見る側がいなければ石だという認識も無いですからね。その辺から美術というのは見方、世界に対する見方だから、それがとても面白いなと最近思うようになってきたんです。

「視覚の見方のほうは、決められた定規とか法則に乗っている部分、発達の可能性はないですよね。ビジュアルアートは、それをどういう風に解釈するかは無限にあると、いつも思っている事だし、見る個人の経験とか知識にすべて頼っているわけだけれど、経験がある事が常に絶対的にいいという上下関係も成り立たない、意味のないものだというのは面白いものだと思います」

・・・ “関節に気をつけろ!” の作品を拝見していて、ルールがあるんだけれども、そのルールが当たり前だと思った時に、それは “何なんだろう” と問う事じゃないかと。オサルスのインタビューも今までずっと “何なんだろう” と思ってきてしまったというか。

「確かにルールというのは言葉みたいなものかもしれませんね。言葉は道具であってそれが続いていくんでしょうけど。そう思うとサッカーとかスポーツは何でしょうね。試合とかルールが無いようなものだったら、もっと純粋に身体の動きだけを見ていくかもしれません。
やはりルールとか応援とか色々なものを、日常生活と同じ事に置き換えてみれば、そのなかにいる人達は暗黙の了解で熱中出来る要素が出てくるわけで、私たちの日常生活はそういうところがありますね。でも一旦そのルールを無視すると、一体何が起こっているんだろうと、例えばサラリーマンが会社に通勤して仕事して帰って来る事自体もすべてバラバラで意味の無い事になってしまう(笑)」

・・・そうバラバラになりますよね。今回ふたつの展覧会を拝見してそこの部分はお聞きしたかった事なんです。

「私は何から何までコントロールして計算だらけというわけでは無くて、ある程度狙いみたいなものはあるのですが、それと同時にまだわからないミステリアスなものが、わからないまま残っているから取り組んでみたい魅力があるんです。まだ説明不足も多いし、何年後かになってから、もしかしたらあの時はこうだったのかもしれないと気がつく事がけっこうありますよ」

・・・なるほど。私も子供の頃は大人になれば色々な事が理解出来るようになると思ったんですが、未だに世界はミステリアスなまんまです。きっと死ぬまでミステリアスなんでしょうね。では最後にこれからのご予定をお聞かせ下さい。

 「パリで21日からフランスの外務省が主催しているスペースで新作ではないのですが大きな作品を展示するのと、2001-2002年頃のカメラのなかにガラス玉を入れて撮った写真があるんですが、それを発表します。
その後グループ展が色々ありまして、日本では来年の1月に東京都現代美術館で、MOTアニュアル2005に参加が決まっています。その後2月5日-4月17日まで大阪の国立国際美術館で写真展があります。これは私の初めての規模の大きな展覧会です。意識的ではないんですが出品作品は1994年から2004年までの10年間の作品が展示されます」

・・・来年の展覧会を楽しみにしています。どうもありがとうございました。

2002年 オノデラユキ作品展 “液体とテレビと昆虫と” の時にインタビューをさせて頂いたのですが、“チャンとしたインタビューにならないのが、オサルス流・・・” なんて書いてあるんです。
あの時もオノデラさんは、きちっと答えて下さっていたのに、きちっと質問できないオサルスが・・・、今から思うと赤面です。反省。あれから二年たって少しはきちっとしたインタビューになったでしょうか。また何年か経って見返してみると反省する事が多いんだろうな〜。あ〜ぁ。これから毎日が精進です。


オノデラユキ 関節に気をつけろ!/ツァイトフォトサロン
東京都中央区京橋1-10-5 松本ビル4F 03-3535-7188 日・月・祝日休
http://www.gaden.jp/zeit-foto/2004/040903.html


オノデラユキ作品展 『Roma-Roma』左目のローマー右目のローマ/il tempo
東京都杉並区高円寺南4-22-5クアトロビル2F 03-3312-2575 11:00-18:30 日・月・祝休
http://www.il-tempo.com

オノデラユキ 関連情報 2002.9

ツァイトフォトサロン http://www.zeit-foto.com/ / http://www.gaden.jp/zeit-foto.html

オノデラユキ図録 出版社:国立国際美術館 出版年:2005

オノデラユキ transvest 出版社:Nazraeli Pr 出版年:2004

オノデラユキ camera chimera 出版社:水声社 出版年:2002

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