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オサルスのおすすめランチ ランチdeチュ その124

金沢21世紀美術館開館記念展 「21世紀の出会い−共鳴、ここ・から」 2004 10/9 - 2005 3/21

金沢21世紀美術館 石川県金沢市広坂1-2-1 Phone 076-220-2800 http://www.kanazawa21.jp/ja/index.html

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大人様定食 1000円

酒と人情料理 いたる
石川県金沢市柿木畠2-8 TEL076-233-1147

http://www.itaru.ne.jp 定休日 日曜日

“秋風のさわやかな季節になりました。いかがお過ごしでしょうか?”
金沢から頂いた手紙の差し出し人は、山本基さん。
封筒の中には、ポロック・クライズナー財団の助成を受けて制作された小さな作品集と10月に行われる展覧会の案内状が入っていました。
山本さんは、お塩を使って作品を制作される方。
インスタレーションなので、資料写真とヴィデオと人の記憶の中にしか残りません。
出会いは2002年の3月。
原宿に今はもう無い時限美術計画/T.L.A.Pのスペースで、迷宮というタイトルの作品を拝見して。
“妹さんの死が切っ掛けで作り始めてお塩は清めの意味も・・。彼岸を見ているような気持ちに。合掌”
と、当時ネットに書いたのを思い出しました。

あれから二年半、オサルスの事を覚えていてくれたんですね。
この作品集のページをめくると、淡々と制作されている山本さんの姿がよみがえります。
(実はあの時は、初日なのにまだ制作中だったんですよ)
“今回はこれまでで最大級の塩のインスタレーションです。近くにお越しの際は、是非お立ち寄り下さい” の挨拶文。

そうだ。近くじゃないけど金沢に行こう。

 今日は山本基さんのインタビュー+金沢21世紀美術館・開館記念展 『21世紀の出会い−共鳴、ここ・から』 +お薦めランチ。盛り沢山ですよ。
皆さんもここ・から、金沢に飛んで下さい。

午前中に到着した美術館(詳しくはhttp://www.kanazawa21.jp/ja/index.html)は、まだ工事の関係者や作家を取材する雑誌にテレビ局が入り乱れ、ごったがえしていました。これから幕が開くのを待つ、舞台裏を見に来てしまったようです。

 建物の外観は宇宙船というよりは、原子力発電所を思わせる。といったらお叱りを受けそうだけど、開かれた美術館を目指すだけに壁面の多くにガラスが使われ、中が見渡せる仕組み。
開放的なのはいいけれど、事務室や学芸・交流スタッフ室は丸見えなので、さぞや中で働く学芸員の方々も気苦労が多いのでは。余計な心配をしつつ、内部を散策して見る事に・・・。
外光を取り入れた光庭があり美術館とは思えない明るさ。
多方向性の円形デザインだから館内をぐるぐる回れて面白い。
ブースがいくつもあるからラビリンスに迷い込んだようで楽しめる。
建築俯瞰図をそのままロゴマークにしているのはセンスがいいよね。

山本さんは、どこのブースかな?、あ、いらっしゃった。

・・・お久しぶりです。お元気でした。

「昨日の12時に作品が仕上がりました。丁度13日間、約100時間掛かりました。昨日はパーティーが計画されていましたが。それどころでは無くて、学芸員の方達は徹夜された方もいますよ」

・・・本当にかなり皆さんお忙しそうですね。

 済みません。山本さんですか? ○○テレビですが、取材を御願いします・・・

しばし中断。

・・・ひっきりなしに取材が入ります。美術館から出るのがたいへんでしょうから、まずここでお話を聞かせて頂く事に。

T.L.A.Pの時も向こうに塩の山があって手前に迷宮が広がっていたんですね。山本さんの作品は、向こうに見える山に手が届きそうで、そこは多分、いつかいく場所だけど、今はまだ届かない場所のような気がします。

「向こうに届いて欲しいという気持ちで手前の迷宮を描いているんです」

・・・迷宮の模様は、自然に手が動いて作り出していくんでしょうか。

 「全体の比率は朧気に把握していますけど、突然違う方向に行ったりして、偶然性と必然性が半分半分くらいですね」

・・・迷い始めるという事は無いのですか。

「やはりありますね。一番最後は決まっているから、その中に納めなければという気持ちが出てくるので、そこだけは形を意識しながら描いています。その他は制約が無いからあっちに曲がったり、こっちに曲がったり、油差しのチューブで塩を空気で押し出し押し出し線を引いていきます」

・・・根気のいる仕事ですね。一日延べ何時間くらい。

「一日長い時で10-12時間くらいです。今回は100時間掛かりましたが、面積が大きくて最後はペースが落ちました。一日に50cmしか進みませんから、でも終わった後の喜びを思うとやりたくなるんですよ。昨日も終わった瞬間、ビデオを撮影してくれてた方から、自然と顔がほころんできているといわれました」

・・・ところで山本さんは、一度社会人になられてから美大を受験されたんですよね。

「高校を出てから地元の造船所で鉄を削る仕事をしていたんです。でもそれだけでは物足りないというか。人が作った図面通りに削る作業だったので不満があったんですよ。どんなに規模が小さくてもいいから、最初から最後まで関わる仕事がしたい。それは美術である必要は無かったのかもしれないけれど、絵を描くのが好きなので美大を受けました」

・・・塩のインスタレーションをされる切っ掛けは、やはり妹さんが亡くなられたので・・・。

「妹が亡くなってから、死というものはどういう事かと、自分の中で咀嚼する為に、人と死というものの間の色々な出来事。例えばお経や葬式、死の判定の基準や末期医療の問題など、一回一回違うテーマで作品を制作していたんですが、葬式の事を考えている内に塩を使ってみようと思いました」

・・・私は、山本さんの作品は彼岸(生死の迷いを河・海にたとえた、その向こう岸)を意識されていると思っているんです。でもこのラビリンスの模様は何処から・・・。

「妹は脳腫瘍で亡くなったんですよ。後から振り返って考えたんですが、一度立体的な作品で “脳” の形をイメージした迷路っぽいものを制作した事があるんです。その作品を俯瞰して見ていたら、立体を平面にした作品を創ってみたいなと思ったんです。ちょうど中二階があるスペースで展覧会をする機会があったので創ってみようと思ったのが始まりです」

・・・脳ですか。脳は、時間的空間的に制約されていて身体から出られない・・・、金沢に来るのも、からだごと脳を持って来なければ駄目だし(笑)。でも脳は、広さも高さも深さも感じる事が出来る。まさに脳はラビリンスかもしれませんね。
送って頂いた作品集を拝見すると、“空蝉” とか “記憶への回廊” というタイトルの作品も掲載されていましたが、迷宮との違いはあるのでしょうか。

「どちらの作品も “行きたいけれど行けない” “届きそうだけれど届かない” ようなイメージなんです。向こうに行ってみたいんだけれど、行けるかどうかは・・・。
その時の塩の状態と湿度とかの関係もあるし、二日酔いの時には線が曲がるし、体調によっては、上手く描けないから失敗してしまう事もあるし、床の凹凸で途切れてしまう事もある。“行けるかなぁ、でも行けないかもしれない” 共通する所はそういう感じですね」

・・・以前、李禹煥が、ある線を引くのでもその日の体調や紙の凹凸に左右される。それが身体性を意識するといっていたのを思い出しました。手作業は身体を使わないと出来ないですから、山本さんは、特に身体を使わないと出来ない作業ですよね。

 「規則的に綺麗になってますが、よく見るとすごくクニャクニャなんですよ。上手くいかない時はずっとイライラしたりね。」

・・・そのイライラも込めながら描いているわけですね。変な質問ですが、あの山は至福の場所なんですか。

「僕にとっては行ってみたい場所というか、もう一度出会ってみたい記憶とか。そういう場所として自分の中にあるので、やはり行けたらいいなと思いながら描いているんです。でも行けるかどうかわからないし、その時まかせ、どうしようも無い事ってあるでしょ。いくらがんばっても叶わない事もあるし。
妻が面白い事をいったんですが、僕は忘れっぽいというか、あまり記憶力がよくないんですよ。彼女がいうには、だからこの作品を創っているんではないかと、彼女はメチャメチャ記憶力がいいんですよ。必要の無い事まで覚えているんです。
でも僕は放っておいたらドンドン忘れていってしまう。“それを引き留めたいんじゃないの”。そんな事をいわれた事がありました。結構当たっているなと思いましたね」

・・・ 記憶にはエピソード記憶と意味記憶があるそうです。脳の中では、様々なエピソード記憶が時間を掛けて意味記憶に編集されていくプロセスが進行しているらしいんですよ。
山本さんも記憶を編集しながら、形が生成されていく。そのプロセスも作品なんですね。あの山を見ていると北陸本線から見える山並みがダブって見えます。ちょっとオーバーだけど、今、ここでエピソード記憶が意味記憶として編まれていくプロセスを、感じる事が出来つつあるというか。

ここでまた取材が入ったので、今度はじっくり館内を散策してみる事に。
ベネチアビエンナーレで金獅子賞を受賞しただけに設計は凄いですよ。
ここの美術館のキーワードは、 「気軽さ」/ 「楽しさ」 /「使いやすさ」。
はじめてだから迷ってしまって使いやすくは無いけれど。
コレクション展示室の大きさと高さ、自然光を取り入れた天井には驚かされます。でも外国人の作家が多いですね。
17ヶ国、44名のアーティストが参加。作品点数は50数点だけれど、ひとりの作家が一室を使っていて、作品とじっくり出会えるのは、贅沢でGOOD。

「21世紀の出会い−共鳴、ここ・から」 展 のテーマは、
“自分の中に潜在的にある可能性や感性を、作品との出会いを通じて、今まで気がつかなかった新鮮な感覚として、いかに目覚めさせるか”
作品と向き合わないと何も生まれないのは確かだから、理にかなっているね。

この美術館は、いま何が起こっているか。現在を見せるのが目的。

 20世紀の芸術の流れを見ることで、それが確認できるらしいんだけど、モダン・マスターズ&コレクション展の展示室が、クローズされていたのは残念。
ここではモネからデミアン・ハースト、金沢の工芸作品、新進気鋭のインスタレーションまでクロスジャンルな作品を展示しているらしい。
でも開館前に一人でじっくり見られたのは本当にラッキー。
美術館に恒久展示されているレアンドロ・エルリッヒの 『スイミング・プール』 や 『ジェームズ・タレルの部屋』 も満喫。

特にタレルの部屋 (ブルー・プラネット・スカイ 2004) は、凄い。
光をテーマにした空間作品、天井部分がカットされているので空の移ろいを体験できる。
ふっと雪が降ったら? という疑問に。
答えてくれたのは、側を通り掛かった工事関係者。

“雪は積もらないように設計されているから寒いだけだよ。この部屋は、アイスランドと直島と妻有しかないんだよ”

凄いなぁと見上げていると・・・。

“作品がわかるのかい? 子供に返らなきゃわからないよな。ある程度年をとってしまうと “美術はこういうものだ” と思ってしまっている。子供の目線で見ないと理解できないよ”

そうですね。子供達といっしょに成長しないと文化は育たないですよね。
金沢には江戸時代から200年以上築いた文化がある。町並みは戦火に遭わなかったので、伝統が生きづいている。美術館が金沢の町に根付くまでには10年掛かるかもしれないけれど、挑戦を続けて欲しいなぁ。

 腰は痛くなりませんか?
お疲れ気味の山本さんが “タレルの部屋” で休んでいました。

「少し手がすきましたからお薦めのランチを食べに行きましょうか」

 酒と人情料理 “いたる” は、シックな店内。
下足箱に靴を入れて、堀が切ってあるカウンターに座ると、おしぼりにメニューがさッ。21世紀愉快石ランチ 2100円の文字に目がとまり、ちょっと割高なのと平日は要予約ありにガク。
もう少し値段が安いと嬉しいんだけど・・・。
僕は、日替わり定食にします。
じゃあ、私は隣の人が食べているのと同じ大人様定食(1000円)を御願いします。
これは、むむむ・・・美味しい。この値段にこの量、この味、絶品です。金沢まで来たかいがありました。ほとんどの魚は富山の氷見から水揚げされているから美味しいんですね。
お刺身は本当に新鮮。香ばしい薩摩揚げに、魚のアラで出汁をとったみそ汁。ゴボウが入った春巻きはトラウマがあるので食べられなかったけれど、ユーカリの入ったじゃこ飯やまったりしたプリン。本当に絶品です。

「 “いたる” は近所にここを含めて三軒あるんですがランチを食べさせるのはここだけ、いつもは飲みに来るだけですけどね」

こちらのお店にも美術館のポスターやちらしが置かれているし、市民が美術館を応援している熱意を感じます。金沢の市民は人情に厚い。そういえば駅前にも大きな看板や旗、電光掲示版が目につて広報が行き届いている。横浜トリエンナーレの時は横浜市民ですら知らない人がいたぐらいですから。

 「皆もうすぐ美術館が出来るんだねと期待はしてますね。髪を切りにいっても話題に上るし、とても期待はしている。でも最初は話題になるのは当たり前ですから、リピーターが増えなければしょうがない。
金沢は伝統のある町だし、それを大事にしながら新しい刺激として、スパイスとして、美術館が機能してくれたらいいと思います。
僕が金沢を好きな理由は、ひとつには古いものをとても大切にしたいという気持ちをみんなが持っている事。凄く誇りを持っているし、誇りを持ちすぎて困った事もありましたけど、それがいい形で融合してくれればいいなぁと思いますね。市民ギャラリーではクロスジャンルに挑戦する意気込みがあるみたいだし、結婚式もするみたいなので楽しみです」

・・・結婚式もするんですか.子供が生まれれば託児室もあるし、成長すればキッズスタジオで遊ぶ事も出来る。子供が美術に親しみを感じないと美術館に明日は無いですものね。出来るだけ日常から離れないような美術館になる事を祈ってます。

今日はどうもありがとうございました。

ただオサルスが残念に思ったのは、この千載一遇のチャンスにもっと日本の若手のアーティストを起用して欲しかった事かな。どうせ税金を使うんだから、未評価のアーティストにも開かれた美術館であって欲しかったけどね。
そしてもうひとつとても残念なのは、

青木野枝 展 発電所美術館 2004. 10/8 - 12/19
(富山県下新川郡入善町下山364-1 0765-78-0621 9:00-17:00
http://www.town.nyuzen.toyama.jp/nizayama/

こちらも予定していたのですが行けなかった事です。青木野枝さんごめんなさい。
二、三日泊まることができたらなぁ〜。

金沢21世紀美術館 http://www.kanazawa21.jp/ja/index.html

山本基 関連情報 2002.4 2002.3

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