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藤部明子さんは、2003年に初の写真集 『The Hotel Upstairs』 (ステュディオ・パラポリカ)、2004年に2冊目の
『Memoraphilia』 (同上)が刊行。 "Memoraphilia" とは、記憶への愛、忘れがたい物事への愛着、ふとしたきっかけで回想にふける心を意味するそうです。 きれいな言葉ですね。聞いてみましょう。 ・・・2003年の展示(詳しくはhttp://www.gaden.jp/zeit-foto/2003/031014.html)も拝見しましたが、今回は展示方法は、以前とはだいぶ違いますね。
そういう部分もありますね。 今回はイメージを層にして見せたかったのです。 記憶の断片の連なりと重なり・・・例えばこの位置(一列目の前)に立ちつつも、奥のイメージにフォーカスを合わせることも出来ますよね。そうすると手前にあるイメージはぼやけて見える。逆に、手前のイメージにフォーカスを合わせた時には、奥にあるイメージはぼんやりとした背景となって視界に入ってくる。 ・・・なるほど。写真を撮りはじめたのは97年からということですが、きっかけを教えてください。 別のことを習うべく通い始めた週末カルチャーセンターのようなところで、たまたまやっていた写真のコースを覗いてみたんです。100人位の受講生を収容出来る大きな講義室の窓を目張りして、カメラ・オブスキュラ※1 と葉っぱのフォトグラム※2 のデモンストレーションが行われていました。それまでコンパクト・カメラで撮る程度で、カメラの構造も知らず、もちろんカメラ・オブスキュラなんて聞いたこともなかったし、暗室の経験もゼロでした。ですから、この二つ、カメラ・オブスキュラ内に写し出された映像と、白黒の印画紙に葉っぱのイメージがゆらゆらと浮き上がる様子に衝撃を受けてしまって。すごく驚いたんです。 ・・・ところで 『The Hotel Upstairs』 (サンフランシスコのノースビーチのコロンバス・ホテルという名のレジデンシャル・ホテルで何年にも渡ってそこで生活をしている人達を写した作品) では、何故外国を舞台にして写真を撮ろうと思われたんでしょうか。 元々ムービーのコラボレーションで、はじまったことなんです。当時カリフォルニア在住だったアメリカ人のフィルム・メーカーから「フィルムの中にスチルのモンタージュを入れたいので、コラボレーションをしませんか?」と誘われたのがきっかけです。私の方は、その話がやって来た当初から自分の撮った写真でもって、ムービーとは別の作品を作りたいという妄想がありましたけれども(笑)。 ・・・写真集の出版と撮影年はいつですか? 『The Hotel Upstairs』 は99年の春に撮影したものが2003年の秋に出版されました。 『Memoraphilia』 は98年に撮影したんですが、この度本が出来上がって、こういう形で展覧会に結びつきました。 ・・・そうなんですか。私はてっきり 『The Hotel Upstairs』 の次が 『Memoraphilia』 だと思ってました。この 『Memoraphilia』 に写っている方が、オランダの文筆家で芸術家のチェベ・ファン・タイエン氏なんですか? ええ。この文章に登場する人物です。
ちょうど98年の夏にヨーロッパに行く機会がありまして、彼が暮らしているアムステルダムに立ち寄り、写真を撮りました。ただ撮影当時には、それらの写真を展覧会で見せるとか、本にするとかいう計画はなかったです。 『The Hotel Upstairs』 の本を作るにあたって、いろいろな方に相談にのって頂いたんですね。その際に 『Memoraphilia』 のカラーコピー本もついでに見て頂いたところ、こっちの方が好きだという方もいらっしゃって。 ホテルのシリーズを本と展覧会という形で発表してみて、よくわかったことなのですが、形にして発表することは大事なんだなと。バカみたいですが。 『Memoraphilia』 のシリーズを、このまま何もしないで放っておいたら腐っていくだけだろうなと(笑)。腐ってしまう前に形にしたいと思い立ったんです。で、もう一度、編集とプリントをやりなおして、本が出来上が りました。 ・・・写真の順番の流れはどうなんでしょうか。写真集 『Memoraphilia』 は、淀みのない流れが際立っているように思いました。ページをめくるごとに記憶が・・・私はそこに立ち会ったわけではないのに、何か懐かしい記憶を呼び覚ますような、その家主の記憶の断片が、自分の記憶に重なり、その温もりまでも伝わってくるようなイメ ージを感じて・・・よく出来ていると思ったんです。 そういう風に見ていただけると、本望です(笑)。 ・・・順番はどのように組まれたのかなと・・・。 勿論考えました。この緑の表紙の本 (キンコーズで制作した 『Memoraphilia』 ) が最 初に作ったものなんです。98年の初秋のことです。本当にすごい勢いで作ったので、編集も2晩位うんうん唸っただけなんですよ。 今回、何人かの方に、白黒とカラーの混ざり具合がいいといわれたんですが、正直いって撮影当時にコンセプトがあったわけじゃなくて・・・私は元々色が好きなんですね。けど、撮影当時は白黒の暗室作業をはじめて2,3ヶ月といった時期だったので 「自分でフィルム現像して、プリントを作るには白黒やなぁ」 と思って、白黒のフィルムで撮影したんです。けど、色見も気になるからカラーでも撮っておこうと。今はカラー・プリントも小さいものは自分で作りますが、その頃はカラー・プリントが自分で出来るなんてことすら知りませんでしたから・・・白黒は自分でプリントして、カラーはラボに頼んだんです。同じタイトルの本ですけど内容は少し違います。 これが叩き台といえば、叩き台ではあるんですけども、あまりに冗長すぎる部分があって、もう一度考えて編集をやりなおしたんです。
カラーコピーの本には文章は入っていないので、今回、新たに書いたのですけれども、これは結構苦しい作業でした。ミルキィ・イソベさん、管啓次郎さん、アルフレ ッド・バーンバウムさんからのアドバイスを頂き、とても助かりました。 ・・・先ほど気がついたんですけど、この展示は裏? から見ると画面が黒くなっているのは何故でしょう。 演劇とか映画のブラック・アウトの効果を狙ってみたんですが。あとは・・・文字通 りのブラック・アウト (一時的な記憶喪失) 。何かを想起しようとして、目を閉じてみても、真っ暗なだけで、イメージが浮かんでこないことって多々ありますよね? ・・・なるほど。ブラックアウトで思い出しましたが、『Memoraphilia』 のテキストの中に ‘終わりのない軌跡’ という言葉があったように思うんですが、これは死ぬまで続く記憶という意味なんでしょうか。 死ぬまで続くというか、記憶は過去と関係があるものだけれども、それだけで終わりじゃない。実は後ろ向きなだけなのではなくて、それを未来にどういう風に繋げていくかを感じてもらいたい。 ・・・私の言葉のいい回しが悪かったんですが、“死ぬまで続く”という言葉をよく使うものですから、要するに人生は何が起ころうと自分が死ぬ、その瞬間まで続くわけだから、苦しくても荷物を背負って生きなければならない。だいじなのはその続け方(軌跡)だと思うから・・・。 では最後に藤部さんの続け方・・・2005年、これからは? まだわかりません(笑)。少し撮影はしてはいるんですけど、まだ形になっていないんです。 ・・・日本は撮らないんですか? 撮りますよ。たまたま、こうなっちゃっただけですから。 ・・・たまたま、こうなっちゃただけだからといわれても、こうなったインパクトが強いと思うので、また新たな目線で挑戦しなければならない。結構しんどい作業だなと人ごとながら思います。がんばってくださいね。3冊目楽しみにしています。 どうもありがとうございました。 『The Hotel Upstairs』 と 『Memoraphilia』 の撮影の順番が逆だったとは思いませんでした。
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gaden
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