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オノデラユキ作品展 「オルフェウスの下方へ」 2006年9月5日(火)-10月7日(土)

  ZEIT-FOTO SALON
  東京都中央区京橋1-10-5 松本ビル4F TEL 03-3535-7188 日・月・祝日休
  http://www.zeit-foto.com/ http://www.gaden.jp/zeit-foto.html

国立国際美術館上海美術館、ニエプス賞受賞と破竹の勢いで活躍されている。
オノデラユキさんの新作展が開催されています。

9月2日にインタビューしたものを編集致しました。

・・・撮影はかなり上から撮られたんでしょうか。

 三脚をできるだけ高くして、上方から撮ってるんですね。真上から覗く感覚とは少し違うので、そうすると、天地も左右も分からないような眺めなんですよ。天地も左右もわからない眺めだから、プリントの時に、撮影したときと同じ方向のネガもあれば、逆のもある。それで何かパースフェクティブがおかしくなっていて、ちょっと目眩を起しながら見るようなそんな感じの視点になっています。

・・・すべてこういう作品なのかと思っていたんですが、エレベーターが開くと、「え?」。

 今回 「オルフェウスの下方へ」 の作品だけでまとめることもできたんですけれど、今まで東京で発表するときは2カ所でしたので、敢えて小規模にするよりは、少し違和感のあるものが入ってしまっても良いのではないかと・・・同じようなタイミングで作っている別の方向性の作品も展示したいなと思いましたので、プレスとはまったく関係ない写真がいきなりきてしまったんです。

・・・やられたと思いました。

  この作品は隠し撮りをしているシリーズの一点なのですが、私が歩いていたら前にいた女の人が、突然手を挙げてあくびをしたんです。カメラは小さいカメラなんですがカムフラージュをして首から下げて撮影しています。

・・・白い部分は?

 この白い部分は現像の時に自分で黒い紙を切って、プリントの時に印画紙の上に直接貼り付けて露光したものです。隠し撮りなので、顔を消すということもあるし、それと同時に身体の動きに興味があったので、それを誇張するために、顔の部分を紙で隠しているんです。

・・・切り抜いた部分が、模様になっているのは面白いですね。

 足してある感じですね。でも黒い紙の部分は露光されないものですから、実際は欠如なんでしょうけれど、紙自体は、私がハサミとカッターで切り抜いたもので一つ作り上げたものだから、だからそれがちょうど逆転している感じになっています。

・・・タイトルをお聞かせ下さい。

 「11番目の指」 といいます。隠し撮りなので、ファインダーを覗いてないんですよ。ですから瞬間を撮るのは、目よりも指にかかっているんです。それで10本だと普通なので、その一つ上、被写体以外のもう一つ外というか。写真を撮る人を意識させることができるかなと思って。あともう一つは、身体に関わるシリーズなので、身体の部分をタイトルにつけたいなというのがあって、結果的に指になりました。

・・・2004年に発表された 「関節に気をつけろ」 のシリーズの延長線上にあるということでしょうか。

 そうですね。日常の何気ない動作とか仕草とか、ちょっとした動きでも意味が分からないことってありますよね。
これも二人が見詰め合っているのか、違う方向を見ているのか全然分からないんですけれど、顔がいきなり隠されると、身体の動き自体が出てくるんです。このマスクを外すと全然違う。外すともっとカッコイイ表情をしている男の子達二人でしたから(笑)。
人間を写真に撮ったときに一番重要なのはモデルの視線なんですよ。目線は顔に集中してしまう。いちばん大事なところを隠してしまっているということも言えるんですけど。

・・・あくまでも無意識なうちの動きの中に身体性が浮かび上がるということですね。

 それとあともう一つは、焼くときに黒い紙を1枚貼ることで、逆に言えばマイナスがプラスになってしまうというか。装飾的ともいえるんですけれども、何か別の形跡を残せるんじゃないかと思いました。

・・・そうしますと。今回は三つの方向性の違う作品を展示されているということでしょうか。

 モノクロのホテルの作品とポラロイドの作品はセットになっています。モノクロの作品の下方に入っている数字はみんな一緒の数字なんです。それはこのホテルの緯度と経度を印しています。ポラロイドも全部同じ番号が入ってますけど、これはホテルの作品の全く真裏の数字になるんですよ。

・・・少しご説明いただけますか。

 「オルフェウスの下方へ」 に関しては、ある事件と伝説みたいなものがベースにあるんですけど、それと同時に、自分の真下を見てみるというか。
 自分が今いるところで、最も遠いところは、自分の足の下のさらに先。それと実際にあった事件と伝説が絡んできて、それが一つの移動を起こさせてという設定です。2003年に 「Roma Roma」 で二つのローマを撮ったときに、その次も何か移動に関するもので、もう少し展開したものをやりたいと思っていました。
すぐに思いついてすぐに現実化するタイプではないので、ずっとじっくり考えながら、最終的には反対側に行きついたのです。私はこのシリーズにおいて地球の反対側という考えよりは、誰もが今いる場所の真下というか。真下に向かう向こう側というのがいちばん大きいと思います。

・・・真裏というのは何処になるのでしょう。

 ホテルはマドリードなんですよ。その真裏はニュージーランドの北島のある地点にあたります。正確な位置はかなり細かい地図でわかりますし、ネットでも調べられます。ただ、伝説の話になるとかなり昔のものですから多少の誤差みたいなものはあるでしょうけれど、裏はほぼこの場所になるんです。
またマドリードという場所は15世紀にコロンブスが新大陸を発見するために出航したさせたパトロンとしてのくの国荷に国場所でもあるし、大航海時代にとても強かったスペインの首都でもある。そういうつながりも浮かび上がってきました。

・・・伝説というのは。

 この作品のために色んな資料を探したんです。二つの話と書いてきましたが、すべてがノンフィクションであるわけではなくて、その中にフィクションを含めているし、敢えてその辺は入れ篭状態にしているんですけれど、たとえば映画とか小説でもどこまでが本当でどこまでが架空のものだか分からない。今回はそういうものでもあるんです。

・・・少し話が逸れるかもしれませんが、自分の原点を見るという意味合いで、昔からよく足許をみよ。といいますよね。でも自分の足元というのはとても不安定。それを自覚することによって、何か見えるかもしれないですね。それは特別な発見とかいうのではなく、日常生活の中の些細なことかもしれないけれど・・・。

 小さな発見の繰り返しですよね。それをいかに面白く感じるかで、想像力を掻き立てられる。私の作品とは直接関係ないかもしれませんけど、私たちの時代というのは、何でも記号に変換することがすごく多いじゃないですか。たとえば携帯のメッセージでも、伝えたいことをいくつかの限られた言葉から選択したり、最終的には絵文字でもOKになってしまう。それは全般的現象と思うんです。
ある不思議なものをひとつの言葉で片づけて、すごく明快にしたような気になっている。そうすると、安心もできる。そういう傾向が現代はずっと進んでいるような気がします。大体手紙自体を書かなくなりましたでしょう。
手紙をワープロで打ったときには、例えば字が小さくなったり太くなったり強くなったりとか、そういう身体性や気持ちの襞は出ない・・。携帯になってしまえば、またさらにもっと短い記号化されたもので、コミュニケーションが成り立ってしまう。それのアンチというわけでは全然ないんですけれど、私自信の仕事は、もっとアナログ的なというか。
例えば移動であれば、今はパソコンで地球の表面はどこでもるし、簡単に移動も出来ますが、敢えて実際にその場所へ行ってみるとか。
プリントに関しても、作品の下方の文字は、透明のフィルムに焼いたものをのせて焼いているんです。ある意味では、フォトグラムと写真の両方が見られる。
写真は普通引き延ばして、大きくも小さくもできますけれど、これに関してはこのサイズしかできない。それはフォトグラムの要素も入ってきているからでしょうし、なんでも瞬時にいろいろなところに送れる情報としてよりは、そのものでしかない。イメージではあるけれども、物質とのものでしかないものなんです。

・・・ポラロイドを使われたのも一枚しかないものだからということですか。

 ええ。「オルフェウスの下方へ」 (モノクロの作品) の反対側の伝説のある場所に行ってみようと思った時に、ホテルの部屋と同じ手法で撮るつもりは無かったんです。やはり一点性の物しかないなと思ったんですよ。たとえば事件現場は昔は証拠保存のために、ポラロイドで撮影していたようです。
そういうことも絡めて考えると、一点性のものにしたかったし、しかもカラー写真ということでも、色んなサイズに引き伸ばしと複製が可能なネガではなくて、これ1枚でしかない。その場所で何枚か写真を撮りましたけれど、同じ写真は二つとありません。
この余白の下方に書かれている文字は、今はほとんど消滅してしまった 「活版印刷」 なんです。これを探すのにとても苦労しました。
パリに昔から住んでいるイギリス人の職人の活字工がいまして、彼は色んな古い書体をコレクションしているんですよ。これは1726年と刻まれた当時のオランダの書体なんです。ですから、数字によってはすごく下に下がっているものや、上に上がっているものがある。 それがその時代の特徴だと思うんですけれど。
ただ、実際に 1726年のこの文字とともに、この写真がさかのぼるかというと、
(この時代にはまだ写真は発明されていない)また別の問題なんですけれども、ただこの古い活字と一体になって、この枠の中で一つの作品として、写真自体も何かこう変わって時間をトリップしてくるとのではないかと思ったんです。

・・・ある意味虚と実という二元的な意味合いがあるということですか。

 閉じた部屋と開かれた外の風景という意味でも、そういうものがあるかもしれないですね。

・・・写真からいろいろのものが見えてきますね。

 映画の場合はフィクションとかノンフィクションなどのジャンルで分かれたりしますけれど、写真というのはそういうことはないですよね。基本的にはノンフィクションのものだと思われている。私がこの二つの場所に移動したのは事実であるし、いくつかのことも事実であるんだけれども、その中に偽りを混ぜたとしても、逆に言えばかえって謎の面白さが出てくる。
そもそも写真はノンフィクションだと思われてることが一般的には多いわけですし、大体1726年ということがありえないことですし(笑)、写真と文字が一緒に語られることの関係性を、純粋なイメージだけでもなくて、なるべく引っぱってきたいなと思いました。

・・・驚かされた展覧会でした。

 わりと毎回違う作品を出してますでしょう。わざと違うことをやってるわけでもないし、それも自分が興味のあるこのひとつでもあるんでしょうけど、今まで自分が色々作ってきたものについて他者から与えられたストーリーがあるわけじゃないですか。
おそらくある程度自分がそれに囚らわれている点とあとはそれを解体したい気持ち、その両方がないと面白くないと思うんです。それでどういう見せ方をしたらいいのかというのはもちろん毎回悩んでトータルで考えながら制作しています。

・・・楽しみにしたかいがありました。

 このシリーズを入れることで、「やっぱりわかんないわ」 と言われるんじゃないかと思ってました(笑)。ポラロイドということ自体も場合によってはすごく拒絶反応を起こす人って結構いると思うんですよ。
ポンとシャッターを押すと、プリントまでできてしまうという簡単すぎるようなものですし、ポラロイドが主にアートに使われていた時代というのも、限定されるし、だからそういう意味では拒絶反応を起こす人が、出てくる気がしないでもないけれど、今回の場合緯度経度と時間軸のズレみたいなものの関わりがあって、白い画面の中が重要なんです。
また見せ方も普通に提示するのではなくて、本を見せるような感じにしたかったので、この方法で展示しました。でもこういう言葉がついて来なくても、自由に見ていただいて、想像してもらえれば、逆にそれができるようじゃないと、ただの説明作品になってしまいますから、実際は写真は写真、私がいろいろ考えて書いた文章を何も知らなくても見られるものでなければならないと思います。

・・・最後に受賞された感想をお願いします。

 「93年から、フランスに住みはじめて、97年から展覧会をするようになりました。賞を受賞したことは、具体的には新たな仕事につながることもあるでしょうけれど、自分の気持ちとしていちばん残ったことというのは、この国とのつながりが深まったことです。もちろんその国に住んで、活動しているということは、すでにそういうことですけれども、やはり客観的な部分で、審査で選ばれたということはとても嬉しいこと。ただフランスに限るわけではなくどこにいても、常に外国人としての立場を続けていたいなという思いもUありますね」

今日はどもありがとうございました。

オノデラユキ  関連情報
2006 09 2006 05 2005 02 2005 01 2004 09 2004 09_2 2002 09

オノデラユキ個展情報 2006. 9月〜11月
Yuki Onodera <solo shows> information. Sep-Nov, 2006.

* Zeit-foto Salon, Tokyo
(New works)
from 2 Sep to 7 Oct 2006.

* Mediatheque Nantes, Nantes, France
from 14 Sep to 1 Oct 2006.
In the festival pour la Photographie contemporaine
"QUINZANE PHOTOGRAPHIQUE NANTAISE 2006"

* Images du Pole, Orlean, France
from 21 Oct to 21 Nov 2006.
In the rencontres internationales d'architecture d'Orleans "ArchiLab 2006"

* Galerie RX, Paris
from 23 Oct to 2 Dec 2006.
(New works)

* Galerie Chambre avec Vues, Paris
(retrospective)
from 24 Oct to 30 Dec 2006.

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