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ホントに本と。 石川健次 ISHIKAWA Kenji

 「個人美術館へようこそ!」
名作を深く感じる旅へ 日本全国厳選52館
石川健次著  定価:1238円+税 アートヴィレッジ発行

 石川さんは、1959年山口市生まれ。東京芸術大学卒業後共同通信社を経て毎日新聞社に入社。現在東京本社学芸部で美術を担当されています。
2001年に「ランチdeチュ」でもご一緒させていただきました。
http://www.gaden.jp/info/2001a/011017/1017.htm

・・・「個人美術館へようこそ!」 を拝読して、石川さんは美術館を紹介されているけれど、「人」 に出会いに行かれたように感じました。この本は、毎日新聞の日曜版に掲載されたものをまとめられた。ということでよろしいでしょうか。

 そうですね。基本的には、全国にある個人美術館を訪ねて、毎日新聞日曜版に1年間にわたって連載された 「個人美術へようこそ!」 を加筆・訂正したものです。

・・・全国に個人美術館はたくさんあると思うのですが、今回選ばれた美術館には、何か基準があるのでしょうか。

 基本は、現在きちっと活動をしている美術館。余り小さい所は外して、著名な作家の美術館。それらを候補に挙げまして、大体100館を超える中から、著名度や人気度、そして私自身の個人的な趣味を入れながら、最終的に52館に絞り込みました。

・・・日本画、洋画、彫刻、写真など、いろいろなジャンルに分かれていますね。

 ひとつのジャンルにこだわらないで作品を選びました。個人美術館という括り方ですので、もちろん主役は作家なんですけれども、それ以上に個人美術館の活動に主眼を置いた形です。

・・・個人美術館の活動に主眼を置くといっても、個人の美術館は、公立の美術館と違って、常に予算が組まれているわけではありませんし、もっと言えば、作家の御家族が運営されている所もある。ある意味、個人美術館の定義は難しいような気がしますが・・・。

 基本的に個人の作家の名前を掲げて、個人の作家を中心に検証し、広く世の中に紹介することを一番の目標にしている美術館を、僕は個人美術館として定義しています。
ただそれだけではないさらなる広がりがあってもかまわないんです。それこそ 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館のように、大々的に宣伝している美術館もあれば、夫婦で細々と運営している所もありますからね。

・・・ 小野忠重版画館は、ご夫婦で運営されていて、お茶まで出してくれたと書いてありましたね。

 そうでしたね。僕はいろいろな個人美術館を学生の頃からずっと回っていますが、「どうしてこんな所に美術館があるのか」 と驚くこともあるし、同時に、小さくて細々と自前でやっている美術館を見ますと、いったいどういう人が、やっているんだろう 「生活はたいへんなんだろうなとか、運営費はどうしてるんだろう」 とか興味はつきないのです。そういう小さな所も、せっかくいい活動をしてるのであれば、紹介したいなと思うんですよ。

・・・小さくてもがんばっている所はありますものね。

 まさにそうです。今回、紹介した中では、原爆の図丸木美術館の活動は、すごくたいへんなんですが、それを紹介できたのは、とてもよかったと思っています。冒頭で 「人に会いに行っている」 と、言われましたが、その言葉を、僕はすごくうれしく思います。
個人美術館は、作家の家族の方達が運営されているケースが、多いんですけれども、その方達が、その作家を愛して、その作家の作品を広く紹介していくということに、ある意味自分の半生や人生をかけて、それこそ私財を投じてやっている。そういうエネルギーというかな。それは人事ながらすごいことだと思うんですよ。
僕も美術が大好きだけれども、自分のお金を投じてまで、何かをしようとする勇気はない。もちろん自治体が運営しているケースもありますけれども、それはそれで一つの目的があるわけですからいいんですけれど、そういうすごさというかなぁ。素晴らしいですよね。その人たちのがんばっている姿を、紹介したいなと思ったんです。

・・・なるほど。孤高の画家という言葉があるぐらい、作家は個人主義ですし、浮き世とかけ離れた高い境地にいませんと、絵は描けないものだと思うんですけれども、個人美術館は、回りとのかかわりあいや、つながりのある部分が大切になる。そういう関係性で成り立っているわけですよね。
例えば以前、川崎市岡本太郎美術館の学芸員の仲野さん(http://www.gaden.jp/info/2004a/040803/0803.htm)に、お話をうかがったことがあるんですが、「この人はすごい」 という気持ちで、応援されている。その気持ちがないとできませんよね。ただその時代にとても活躍された方でも、だんだんと忘れ去られてしまうのが世の常。岡本太郎は、個性的なキャラクターの持ち主ですから、若い来館者も多いけれど、ほかの個人美術館には、ほとんど中年以降の方達しか訪れないと書いてあった。そうするとこれから先は、どうなるのかと思いますと、哀愁といいますか。淋しさを感じますね。

 そういうことがありますので、連載を始めたんですけれども、これからなくなっていく美術館も少なからずあると思うんですよ。それこそ今熱心に活動している家族の方が、いずれは亡くなったり、活動ができなくなったりしてしまうかもしれない。それを記憶に残したかった。
これまで個人美術館の活動をかなり調べましたが、資料として何も残されていないですよね。本も十巻にみちません。その紹介もすごくメージャーで、活動がうまくいっていて、規模が大きくて宣伝ができるような所なんです。そういう所は旅行雑誌で紹介されたりしますけれども、細々とやっている所は以外に紹介されていないのが現状なんです。

・・・最近、私にとって美術館は、余り身近には感じられない存在になりつつあるように思うのです。すごく距離を感じるというか。それがこの本を読みますと、人との出会いがあり、それをオーバーに書きたてるのではなく。淡々と石川さんの目線で語っておられる。エピソードもとても楽しいですしね。

 まさに距離を短くするというのが、一つの大きなねらいなんです。まず読んでそこだけで完結して欲しくない。それは僕の中では、新聞記事を含めて、美術の記事を書く時には常にあるんですよ。それを見て行ってみたいという誘い水になるような、文章というか記事を書きたい。そういう意味で身近に感じてくれたらうれしいですね。

・・・自分の意見や感想だけ言ってそれで終わってしまいますと、わかりづらいですよね。現代美術はわりとそういう突き放した部分を感じるから・・・。

 美術のすごく好きな人や、プロパーの人は、作品だけ論じていれば楽しいんですよ。ただ一般の人にはね。家を出て美術館に行くまでのあれこれとか、美術館周辺の環境や景色、中での出来事とか、どんな人だったとか、展示会場を出てから、帰る時のお土産やグッズ選び、そこでお茶を飲んだりとかね。そういう全体験が人生を豊かにする美術体験に、つながるんじゃないかなと思います。そういう視点で書いたつもりです。

・・・そういえば、中村研一記念美術館の章には、「絵に生かされる」 と書いてありましたよね。抹香臭い言い方に聞こえるかもしれませんけれども、見ることで、元気をもらうと言いますか。その体験が今はとても少なくなっている。それをこの本は思い出させてくれた。別にヨイショしているつもりはないですよ(笑)。もう本は何冊か書かれているのですか。

 共著はあるんですが、単独で出したのは初めてなんです。

・・・でもなぜアートヴィレッジの発行で、毎日新聞社発行ではないんでしょうか。

 なぜでしょうね。簡単に言うと売れないからでしょう(笑)。

・・・世の中は、経済優先にならざるを得ないのかもしれませんね。美術に関わることで、生活はたいへんになるかもしれないけれど、心は錦(笑)。
美術は、先端ばかりを追いかけても、見えてこない部分があるような・・・梅原猛が書いていたように 「真理は手近に隠れている」 そんな気がしますね。

今日はどうもありがとうございました。

「個人美術館へようこそ!」 石川健次著 定価:1238円+税 発行:アートヴィレッジ

関連情報 2001.10 毎日新聞社 http://www.mainichi.co.jp/

てんぴょう(展評) http://www33.ocn.ne.jp/~artv_tenpyo/tenpyo.html

アートヴィレッジ本の紹介 http://www33.ocn.ne.jp/~artv_tenpyo/book.html

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