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スティル|アライヴ 2007年12月22日 - 2008年2月20日

  東京都写真美術館
  東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内 TEL03-3280-0099
  http://www.syabi.com/

 毎年写真美術館の学芸員が入れ替わって企画を練る〈日本の新進作家〉を紹介する展示も今年で6回目を迎えました。今年の企画は石田さんです。セレクトされた四名のアーティストは皆30代、写真と映像をメディアにされている伊瀬聖子・大橋仁・田中功起・屋代敏博の方々です。

 ・・・石田さん曰く。[スティル|アライヴ] とは。

 「すごく簡単にいえば、止まっている状態と動いている状態の対比みたいなことなんです。それは写真と映像のことでもあるし、いろんな意味がそこに見つけられると思っています。
展覧会というのは出来上がってしまうとパッケージされたようで、そこでもう止まってるような感じになってしまう。それに対して外側にある現実というのは絶えず生きて動いている。それが両方つながるといいなと、そういうようなことを意図して企画しました」

 展示は四人四室、空間を完全に四等分した個展形式になっています。

 第一室の展示は伊瀬聖子さん。左側のAパートが24分、右側のBパートが6分の長さの二つの映像で (サウンドを伴って) 構成されています。音楽を制作しているのはスティーブ・ジャンセン氏。

 タイトルは 「Swimming in Qualia (スイミング・イン・クオリア)」

 「タイトルにそんなに意味を持たせているわけではなくて、感覚で見ていただきたいというか。すごくあやふやなままで、雰囲気を伝えたかったので、クオリアという言葉がピッタリだと思い引用しただけです。また Swimming という言葉は、霧や池、雪、水中の植物など、水に関係する素材をたくさん使っているので、そこから水のイメージが浮かぶことと、肉体全身を使うということがピッタリだと思ってつけました。
作品からストーリーを読み出すとか、これが何かを表現しているだとか、そういう見方ではなく、ご自身の感覚で見ていただきたい、それがイメージや五感につながり、肉体を意識するような感覚につながるような作品になればと思っています。今回は二つプロジェクションを使用してるんですが、この二つはタイミング的に絶対同じ組み合わせにはならないんです。二つの画面や音の影響の違いを美術館という場所で体験していただけたらなと思います」

 今回の作品は美術館だけで完結せずに、スティーブ・ジャンセン氏のライブコンサートのバックグラウンド映像として展開されて行くそうです。

 第二室は屋代敏博さん。
学校で展開する回転回LIVE!の作品。
写真美術館では教育普及のために、スクールプログラムが組まれているそうです。
今回は写真美術館と屋代さんと学校(幼稚園から生涯学習)との連携授業の中から抜粋された作品が展示されています。

 「その現場で作り上げるので、人が回転すれば、回転回LIVEになります。ですから写真作品だけではなくて、現場自体も作品になるのです。またこの作品は現場にいる人が、誰でもシャッターを押すことができますし、記録ビデオも同じようにして撮ってもらっています。ですから回転回LIVEのたびに、まったく違う映像になっていると思いますよ」

 しかし何故回るのか?

 「僕は学生時代にすごく難しく物事を考えてしまって、どうやったら簡単に物事が考えられるのだろうと・・・その時に自分の目に見える物が既に難しいから頭の中まで難しくなってしまうのではないかと思ったんです。
ですから難しく見える物をどうやって簡単に見えるようにするかを考えて・・・その時に思ったことが、物の姿形が違って見えるといいのではないかと、それをすべて同じカタチに還元したら頭の中まで簡単になるのではないかと思いました。
そのときは学生でしたので、レコードをたくさん聴いていて、ちょうどターンテーブルが目にとまり、ターンテーブルの上にいろんな物、例えば消しゴムとかノートだとかアジの干物や大根など・・・を乗せて写真を撮ってみたんです。それぞれの物は違うカタチなんですけど、みるみるうちに全部同じカタチになっていたんですよ。
それが15年位前のことなんですが、自身にも同じことがいるのではないかと、ある日カメラの被写体側に飛び込んだんです。その時はもう頭では回転したら丸くなってすべての物が同じカタチになっていくという風にわかってたんですけれども、自身が回転した写真を見るとすごくおもしろくて、このおもしろさをどうやって伝えたらいいかと考えた末、みんなにも回ってもらうようになりました」

 きっかけはターンテーブルだったんですか。回転寿司ではなかったのね (詳しくはhttp://www.gaden.jp/info/2006a/060407/0407.htm)。
まだ継続中のプロジェクトです。ですから展示だけでは終わらずに、まだ外でも続いています。新春の風景に回って溶け込んでみたいという方は、写真美術館で 1月4日(金) 新春特別イベント 「晴れ着で回転回LIVE!」 があるそうなので、実際に回ってみてはいかがでしょうか。

 第三室は大橋仁さん。タイトルは 「SEA」 

 「バンコクの娼婦と一般の女の子を撮影しています。海の写真はハワイのワイキキビーチの朝を撮ったものです」

 ・・・何故タイトルは「SEA」なのか?

 「女の子が笑っている目やふらふら歩いている犬の感じが、ちょっと海っぽいSEAな感じかなと。あんまり説明するもんじゃないな(笑)。タイはすごく不思議なところなんで、犬と女の子のテンションがすごく似ているんです。道端で寝ている犬と寝ている女の子とほとんど同じ感じなんですね。
生きている何かがつながっているというかね。僕にとってみれば、犬も女の子も海も同じ感覚で撮っているんです。ほとんどテンションは変わらない。この大きく引き伸ばした写真は撮影禁止の場所なんですよ。この子達はタイの売春婦で顔を出したくないんです。ばかでかく撮影禁止と書かれている場所で撮影したわけですから、かなり危険で、続けていると死ぬよという話なんです。

この子達のテンションというのは、ある意味理不尽かもしれないけれども、シャッターを押してはいけない場所でシャッターを1回押した瞬間です。彼女達がものすごく戸惑った瞬間というかね。何かの感情が動いた瞬間なんですよ。でも僕が一線を超えて半歩でも出なければ、そういう瞬間には立会えないわけです。
そういう瞬間にシャッターを押さないと写真にはできないというか。僕がそこにいることはできないというか。それを僕自身が体験したかった。そういうことなんです。写真が目的というよりは体験を目的にして行ったような感覚はありますね」

 かなり高いテンションを狙っている方です。でもお話をお聞きしてある意味写真の本質が垣間見えた気がしました。

 第四室は田中功起さんの作品です。
タイトルは、「家がガーデン・テーブルになり、瓶ビールの消息がわかり、バンドが演奏する時」

 「プランの段階では家を一軒丸ごと壊してその廃材を使って、ガーデン・テーブルを作るというアイデアがあり。それともう一つは、ビール工場で映像を撮りたいという話だったそうです。どう関係があるのかわからないけれど、その二つが一つの展示になりました」
と学芸員の石田さん。

 ・・・何故ビール。

 「写真美術館は恵比寿にあり、恵比寿はエビスビールが有名ですから、エビスビールの製造過程を撮りたいと思いました。ビデオから流れている映像は、エビスビールの大瓶を作っている過程をサッポロビールの千葉工場で撮影した物です。
実際に展示してある瓶もケースもその工場から持ってきた物です。全工程を丸1日かけて工場の中で撮らしてもらいましたので、ビデオからはビールのリデュースのプロセスが一通りわかるようになっています」

 ・・・家に関しては、建造物を壊して破棄されるプロセスを一時的に展示室に持ち込の予定だったそうなんですが。

 「美術館は施工業者に頼んで展示会場を作るんです。この壁はリースの壁です。壁自体もリサイクルされているんですが、施工業者の下請けの方から廃材をもらってガーデン・テーブルやボウリングのレーンを作りました。結局別々の物が一つの場所で、よくわからない理由によってつながっている状態を作りたかったんです。
ビール瓶はボウリングのピンになるからと言ってこの場所にフィットして、展示廃材はレーンになったりテーブルになったりしてこの場所にフィットとした。壁にバンドの演奏の予定がでかく貼ってありますけど、HOSE というバンドを呼んでライブをしてもらいます。
HOSE には 『ピアノ』という曲に、ボウリングの歌詞があるんですよ。ですから彼らを呼ぶことによって、ここにボウリング場を作るということとリンクした。だからタイトルが三つのパートに分かれているんです。僕は世の中の物事というのは多分まったく無関係につながっているものだと思うんです。何故それがつながっているのかという理由が一切ないというか。
例えばカツ丼だってなんでご飯の上にカツがのっているのかという理由はないじゃないですか。たまたまそれを見つけた人が
おいしいと思ってつながりが出来上がっているだけだと思うんです。なので靴をはくとか洋服を着るとか、それと同じような状態をあからさまに違うものでつなげられないかなというのが、多分いちばん最初の出発点だったように思います」

 基本的にこの展示室の中でボウリングをしてもいいし、作品を触ってもいいし、テーブルを動かしてもいいそうです。ただモニターは消さないでほしいということです。

 田中さんの言葉じゃないですが、四人四様でぜんぜんつながりがない展示になっています。まぁ、いい方によっては、四つの味が楽しめるということでしょうか。楽しんでもよし、つまんないなぁと思ってもよし、要するに見る側にゆだねられている展覧会なんですよね。
2008年2月20日(火)まで。

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