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「30年目の三木富雄」展  2008年9月24日(水)-10月7日(火)

 兒嶋画廊
 東京都港区六本木7-17-20 明泉ビル201 TEL 03-3401-3011 11:00-19:00
 http://gallery-kojima.jp/

・・・三木富雄は78年に急逝するまで耳、特に左耳を造り続けた作家。兒嶋画廊では82年、88年、2002年と三回展示されていますが、三木富雄に対して兒嶋さんのかなりのこだわりを感じるのですが・・・。

 画廊を開いて第1回目の企画展が三木富雄展でしたからね。82年は一点しか売れなかったんですよ。それも同業者が買ってくれたんです。ただ現在は作品のほとんどが美術館に入っていますから、一般のオークションにもめったに出てこないと思います。

・・・出会いは。

 実は僕の子供の頃でして、僕の家の裏の家作に黙鬼会という団体のメンバーの方が住んでいて、そこに三木さんがよく遊びに来ていたんですよ。僕と三木さんは10歳違いですから三木さんが20歳で僕が10歳の頃だったと思います。
子供心にも三木さんはとても格好良い人でフォードだかシボレーだか分かりませんが大きなボンネットのアメ車に乗っていまして、とにかく格好良い。憧れていたんですよ。高校生になった頃には南画廊で個展をされたりして注目していました。
三木さんは1958年の第10回読売アンデパンダン展でデビューして、耳を制作し始めたのが1963年。鉄でもブロンズでも銅でもなくアルミと鉛の合金で鋳造しているんですが、はじめはお金がなかったからか石膏で制作したものもあり、最後は形を失った液状化した 「耳」 というコンセプトまで行きました。

・・・今回は資料も多数展示されていますが。

 僕の場合祖父の善三郎が残した書簡やデッサンなどを子供の頃から身近に見ていますので、発表された作品だけではなく資料の重要性をかなり以前から重視しています。ですから今回展示した他にも東京都現代美術館に多数収めているんですよ。
過去三回の展示を説明しますと、82年の時の展覧会はまだ亡くなられた翌年でしたのでかなりの点数が残っていまして、全部は買えなかったんですがいろいろ借り集めて、大きな作品も展示しました。その年に南画廊の志水さんが亡くなられたのでお二人へのレクイエム的な感じの追悼展だったんです。
88年の時に資料展をしていますがその時に展示した 「ビーナスのコラージュ バインダー」 はNYにいた知り合いから譲り受けたものです。このバインダーにデッサンが多数挟まっていたんです。他には三木が最後に京都に住んでいる時に一緒に暮らしていた方から譲り受けたものもありますし、「CECILIA」 というアサンブラージュなどは、ご実家のお母様から譲り受けたものです。

・・・没後三十年ですが92年に渋谷の松濤美術館で特別展をされたぐらいで、それ以降あまり大規模な展覧会はされていないように思うのですけれど。

 それ以後の話は聞いていないですし、皆無ではないですが研究者の方で本格的な 「三木富雄論」 を書かれた方はまだいらっしゃいません。今回峯村さんに文書を寄せて頂きましたが峯村さんもまだ計画中というお話でした。
ですから今回の展覧会が一つの弾みになればと思っています。日本語と英語の論文が掲載されたきちんとしたテキストが刊行されなければ、まさに伝説でしかない。そういう意味で峯村さんに書いてもらったように伝説からの脱却が望まれるということなんです。
皆が良いのは分かっているけれど曖昧模糊とした霧の中に包まれているような存在を、専門家がこんなに素晴らしいのだといってもらわないとね。日曜美術館から問い合わせがあったのですが売り物があるということで 「今週のギャラリー」 で取り上げるのは難しいと言われました。そんなものかと思いましたけれども、今回展数は少ないですが嚆矢になればという思いがあります。

・・・三十年の時代を超えて見ても新しい読みが可能なほど作品に新鮮さがあるように思います。それが普遍性ということだと思うし筋が通った仕事をされている方だと思いました。

 世相は日々変わって行くけれども時代を超えて人々を魅了し続ける。輝き続けるということそれが本物だと思うんですよ。善三郎と生きている時代は違うけれども非常に似ているなという親しみを感じています。美術学校を出ているわけでもないし師匠がいるわけでもない。
いきなりデビューして作品を作り続け、ベニスビエンナーレでワンマンショーもやっているが特別に大きな賞をもらったわけではない。善三郎も同じような境遇で皆が良いと分かっているし凄いと思っているんだけれども誰も大きな神輿を担がない。逆に言えば捏造することができないからいじれないのかもしれないですが。

・・・個人的な意見ですが、私は三木さんの暗さが好きです。繰り返しになりますがディティールの陰影など今の時代にマッチしているようにも。

 そういう意味でたとえば 「耳を作った男」 というタイトルでテレビドラマ化されれば一躍ブレークすると思うんですけどね(笑)。アーティストは格好良くなくちゃいけない。まぶしいようなオーラを発散しなければ。

・・・でもこの方は死の匂いが凄くする方だからどうでしょうか。

 そう。「悲運と自傷」 の記憶を残したままと峯村さんも書かれていますが・・決して暗い人ではないんです。その当時のネオダダの人たちは乱闘みたいな感じだったけれども、非常にスマートでアンソニー・パーキンスみたいにクールで格好良い。議論好きで寡黙だけれどもいつもにこやかに笑っている人でした。でも「耳が私を選んだ」とか人を誤解させるような言葉を残しているので変な伝説が生まれた。逆に言えば伝説は一杯あるわけだからこれからは正論としての三木富雄を期待したいですね。

・・・少し話はそれるかもしれませんが、先日中沢新一さんの講演会を聞きに行った時に、シェークスピアのマクベスの中にある「きれいは汚い、汚いはきれい」という言葉をご紹介されて、そのように宇宙はすべてを内包したものであると言われたんです。この作品はまさにそれかなと生も死もすべて内包していて・・・。

 部分が全体であり全体が部分の集合であるというようなね。

・・・耳が宇宙ですね。

 画廊の奥に中国の塼仏が飾ってあるんですけれど、三木の作品はアメリカンポップの影響も感じるんだけれども、マンダラ的なといいますか千体仏や千手観音を思わせる仏教的な要素が強いように思うのです。とても美しい完成度の高い、日本の現代美術の中、いや近代彫刻を含めても数少ないいい作家だと思います。

・・・どうも有難うございました。

~10月7日(火)まで。

兒嶋画廊  http://gallery-kojima.jp/

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